病み少年に会いました［BL］【オリジナル】

14.病み少年 ページ16

「久々に来たなぁ……」

飼育小屋の前で俺は呟く。

だって、飼育委員とかでない限り、ここに来ることはほとんどない。

……

ていうか……ここ、何気にいい場所……
日当たり良いし、花壇の花は綺麗だし、飼育小屋のウサギは可愛いし。

いい場所見つけるなぁ。俺もここ居座りたいわ。授業とかサボっちゃってさ。

なんて、良からぬことを考えていると……

「……またアンタ……」

背後から明らかに嫌だという風な声がした。

……この呼び方と声は間違いない。

俺はバッと振り返ると、もう既に去ろうとしていた相手の手を掴んで止めた。

「待って」
「……離して」
「嫌だ」

俺が断ると、夕闇は腕をブンブン振り回して、俺の腕をとにかく振りほどこうとする。

けれどその力はすごく弱くて、ただただ夕闇の腕が上下に揺れて終わった。

俺の腕を振りほどくのは無理だと思ったのか、夕闇は諦めたような顔で俺に問う。

「なんで止めるの」
「……心配だから」

俺がそう答えると、夕闇はケラケラと笑った。

いきなり笑い出す夕闇に少々戸惑う。

夕闇は一通り笑い終わると、一瞬にして無表情に変わり、

「アンタが初めてだよ。俺のことなんて心配するのは」

と、少し寂しげに言った。

……けれど、次の瞬間、夕闇はまた人をバカにしたように笑って、吐き捨てるように言ったのだ。

「心配するのはいいけどさ……俺に近づいた人、一回精神的に傷ついて死んでるから、アンタも近づかない方がいいよ」

今、なんて……

……直接的には殺してなくても、遠回しには殺したの……？

……

……俺、風原優人18歳。

……病み少年に会いました。

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