◇心地 ページ6
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「すきです」
勢い任せにぎゅーっと同居人の彼に抱きついた。
頭一つ低い背の私が彼に抱きつくと、ちょうど彼の胸あたりに顔が当たって、その身長差がなんとも恋愛ドラマちっくで好きだ。
顔をすり寄せると回してくれる腕が好き。
腰に回るその手が好き。
頭を撫でてくれるその手つきが好き。
ぜんぶぜんぶ、玄関先まで来てくれて、
私の言った「すきです」に「んなこと知っとるわ」
とかぶっきらぼうに返して、
私の頭を撫でるその手が好き。
「すきです。だいすき」
「へいへい」
「…不正解」
「あ？」
「好きの返事は、『知ってる』じゃ、恋人としては不正解です」
我ながらばかみたいなことを。
子供じみた、ばかっぷる代表な文句。
そんなことを私のヒーローに口を尖らせて言ってみる。
年上で、人気者のヒーロー。
なのにこんなに近くて、こんなに人間味に溢れてて、
ヒーローでもヒーローじゃなくてもどうでもいいんだ、
爆豪さんは爆豪さんだから。
「じゃ、もっかいいきますよ。…好きです」
「…俺もだよ」
「違います！！四文字で！！」
「調子のんな」
「規定オーバー！！」
ああもう、
めんどうなふりして耳がほんのり赤いのも、
照れると口数が少なくなって斜め下を見るのも、
全部、私の胸をぎゅーっと締め付けるから困るんだ。
ばかっぷるって、このことだ。
効いてるのか効いてないのかわからない上目遣い。
じーっと彼を見つめていると、
やがて後頭部を押さえつけるようにぎゅーっと抱きしめられて、
耳元に、私の大好きな声が響いた。
「好きだよ」
ほら、たった四文字、正解なんて簡単に導き出しちゃう。
素敵な四文字にぽーっとする私に、
不意打ちみたく彼は彼の唇を私のそれにくっつけた。
爆豪さんとの時間は、
涙が出るほど楽しくて、
時間を忘れてしまうほど濃くて、
うんざりするくらい心地好くて、嫌になる。
「……バクゴーさん、なんか色々硬そうなのに唇はかなり柔らかいですよね」
「呼吸困難になりてえか？」
「なりたくないですごめんなさい」
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作者名：すた | 作者ホームページ：
作成日時：2016年7月14日 23時
