◇彼の三日間 ページ36
.
じり…じり…と彼が1歩1歩歩みを進める。
「逃がさねぇぞクソわんこ…」
その表情は凶悪で、ほんの少し汗ばんだ顔でにたぁと笑うもんだから、追い詰められる犬の方も恐ろしくて仕方ないことだろう。
苦笑いしながら部屋の中で私は彼と愛犬を見つめていた。さっきから犬に振り回されっぱなしの爆豪さんが、ついに床を踏みしめてがばりと犬に突進する。
「捕ったらぁ！！！！……って！！」
「…あー、、」
するりと犬は逃げ出して、爆豪さんはフローリングに滑りかけて体勢を崩した。彼が転ぶところとか超絶レアだから、逆に面白くなって私はこっそり頬をゆるます。
そのままたったっと行ってしまう犬と、顔をそらして笑う私。真ん中にいる彼は、ユラリと凶悪な笑みを貼り付けて私に振り返った。
「何笑ってんだ川瀬……」
「え？！いやいや！笑うわけ…」
「元はといえばてめぇのせいだろ死ね！！！ワンコロとともに死に果てろ！！！」
「ふっ、ふはっ、爆豪さんが、ワンコロって言うだけで、笑いがっ！」
「死ね！！！」
この人の隣は何でこんなに面白いんだろう。
.
.
きっかけは私が実家に帰ったことからだった。
「…あ？んだこの物体」
「落ち着いてください爆豪さん。生き物です」
「死ぬほど冷静だわ。なんだこいつ。捨て犬か？」
「まさか！こんなに綺麗な子が捨て犬なわけないでしょう！私の実家で飼ってた犬です！」
「へー。名前は？」
「"まつげ"です」
「ダッセ」
ふはっと馬鹿にしたように、というか完全に馬鹿にして爆豪さんは私に言った。なでなでと撫でられる雑種の私のペット、"まつげ"は大人しく私の膝の上で撫でられている。
「ほら見てくださいこのまつげ。これが可愛いから名前をまつげにしたんです」
「安直すぎだろ。さすが馬鹿はネーミングセンスがすっげえな」
「…じゃあ爆豪さんがこの子を飼うとしたらなんてつけます？」
「下僕」
「……私よりネーミングセンスないじゃないですか」
「…あ？」
このあと1時間名前について口喧嘩を続けた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 987人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すた | 作者ホームページ：
作成日時：2016年7月14日 23時
