◇個性 ページ27
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「…私の個性？」
唐突にそう聞いてきた彼にくるりと振り返ってそう言った。
私が戦場に立っていた時だった。戦場とは台所のことだった。刃物を振り回して火を使うんだから、こんなところ戦場以外の何者でもない。
「それはですねぇ〜」
とんとん包丁を動かしながら、ふわふわ笑って声を出す。
「明るくて優しくて話が面白くてーーー」
「川瀬」
「はい？」
久々に「お前」とか「おい」とかじゃなく名前を呼んでくれた！！
嬉しさに思わず振り返ると、爆豪さんはテレビのニュースを眺めたまま口を開いた。
「俺がそういうつまんねえ冗談嫌いなの知ってるよな？」
「知ってますごめんなさい」
なんだこの温度差。さっとまな板に向き直って、もはや口癖のようになってきた謝罪を吐き出した。
そうして今度は切った具材を鍋に突っ込んでいると、再び質問。
「おい、こら、個性はよ言えや」
「…そーですねぇ」
火を中火に。
鍋に蓋をして、あとは煮込むだけ。振り返らずにおふざけ半分。人差し指立てて私は言った。
「ハグしてチューして耳元で『A、好きだよ…』と囁いてくれたら教えなくもないです……わっ、」
あっという間にお腹あたりに手がまわって、ぎゅーっと抱きしめられた。
驚いてる間、感傷に浸る間もなくほっぺにちゅー。
素早すぎてわたわたしている私を尻目に、指と指が色っぽく絡められて、耳元にその綺麗な唇が寄せられた。
ほんとに、？
好きだよ、くるか…？
「…言わなくてもわかるだろ？」
思考がショートした。
ひくい声で囁かれた後、「ん、」と爆豪さんはぱっと離れて私を見た。
仕事か。ノルマか。そんくらい爆豪さんは割り切ってあっさりこなしていたみたいだが、私はめろめろだった。
顔を真っ赤にした私は床に座り込んで、それからごろごろ転がりながら「無理！！無理！！少女漫画かよ！！キャー！！」とか叫ぶ。
爆豪さんはそれを心底冷めた目で見つめてから、
転がる私の前にかがみこんだ。
「言われたとおりしたぞ。お前の個性は？」
「…教えてもいいですけど、どうなっても知りませんよ？」
文句言わないでくださいね。
そう言うと、爆豪さんは「上等だコラ」とニタリと笑った。
……このやりとり、2回目だったりするんだけどなぁ。
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作者名：すた | 作者ホームページ：
作成日時：2016年7月14日 23時
