変わらない記憶でも。 (ページ44)

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山田side

薮｢この注文3番テーブルね！

あと俺ドリンク作るからこの料理運んでくれる？｣

八｢はい、フルーツポンチ出来たよ～｣

土曜日の昼下がり、なんだか今日はたくさんのお客さんが来店していて、みんな忙しくしている。

山｢お待たせ致しました、こちらフルーツポンチでございます。｣

だからみんないつもの余裕は無くて。

山｢……ん、はぁ……………っ、。｣

気が緩んでしまったのか、少しふらついて近くにあるテーブルに手をつく。

だめだ、ちゃんと仕事しないと……………。

山｢光くん、厨房代わるね。｣

八｢はいよー。｣

接客だとなんだかお客さんに迷惑をかけてしまうと思い、光くんとバトンタッチ。

それに、自分が好きな料理をすれば少しでも気が紛らわせるような気がした。

山｢えっとまずは………………。｣

伝票を見て、早速調理に取りかかる。

ナポリタンにオムライスに、カレーライスか……。

山｢ちょっと火強いかな…………っ、いっ………………。｣

火加減を調節しようと頭を上下に振ったからか、それまでジンジンと痛んでいた頭痛が増し、目眩がする。

でも、これはもう今に始まったことではなかった。

実は、1週間ほど前から体調が優れなくて。

薮ちゃんにはいつも口うるさく何かあったら相談しろなんて言われてるけど、やっぱり言い出せなかった。

薮｢涼ちゃん、お客さん来てるみたいだから今光と代わって貰うからね。｣

そして覚束無い手つきで何とか料理を完成させた頃、厨房に薮ちゃんが顔を出した。

危ない、体調悪いのバレるところだった………………。

山｢っ、……分かった。｣

こんな状態で力を使って大丈夫かな、なんて考えながらホールへ出る。

まぁ、誰にも相談していない以上はやるしかないんだけれども。

山｢いらっしゃいませ、こちらのお席へどうぞ。｣

そしてふわふわした意識の中、なんとか接客をする。

案外出来るものなんだなぁ……なんて、他人事のように考えてしまったりもして。

山｢……っ、それでは準備はよろしいですか？｣

正直立っているのもままならない状態で、お客さんの額の近くへ手をかざす。

そしてお客さんの過去の情報を取り入れ、厨房へ戻った。

薮｢ねぇ涼ちゃん、体調大丈夫？｣

すると厨房に戻る僕を追いかけるようにして、薮ちゃんが中に入ってくる。

"大丈夫だって。"

そう言おうとしたけれど体力は既に限界を迎えていたらしく、僕の意識は途切れた。