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山田side
開店してまもなく、ドアのベルが音を鳴らす。
山「いらっしゃいませ〜。
…………あっ、この間の!」
知「先日はどうも。」
山「こちらこそありがとうございました。
お席はどちらにします?」
知「じゃあ…………ここで。」
そう言って、知念さんが指定したカウンター席へ案内した。
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伊「あれ、俺の席の隣に誰か来るなんて珍し〜」
薮「別に伊野尾の席になった訳じゃないけどな。」
山「ここ、ちょっとうるさいですけどごめんなさいね。」
隣で行われているいつもの漫才を横目に、知念さんにそう声をかける。
知「全然大丈夫です。
……実は以前ここへ来た時に、ちょっと憧れてて。
店員さんとここで仲良くお喋りしているのが楽しそうで。」
少し照れくさそうにそう話す知念さんを見て、伊野尾さんは分かりやすく顔をニヤつかせた。
伊「なにこの子めちゃくちゃ可愛いじゃーん!
俺の弟子にでもなる?」
知「いえ、それは大丈夫です。」
山「くふふっ」
伊野尾さんの熱量とは正反対に、冷めた様子の知念さんがそう返すのを聞いて思わず笑ってしまう。
なんだか、これから新しいコンビが見れそうな予感。
知「あっ、そういえば伝えたいことがあったんです。」
山「伝えたいこと……………………?」
知「はい、この前頂いたレシピを見て母に作ってみたんです。
僕、料理は全くといっていいほど出来ないんですけど…………。
それでも母があの味だけは覚えていてくれて、それがすっごく嬉しかったんです。
だから改めてお礼を言いたくて。」
山「それは良かったです。
少しでも知念さんのお力になれたようで。」
そう言って微笑むと、知念さんも同じように口角を上げた。
知「あと、あんまり聞いていいことではないとは思うんですけど……。」
山「…………?はい。」
突然の知念さんの言葉に首を傾げた。
知「ご両親に何かあったりしたんですか……?」
あぁ……なるほど。
山「僕、生まれた時にはもう既に両親が他界していて。
家族ってなんだろう、なんて時々考えてしまうことがあるんです。
………でもごめんなさい、変な気を使わせてしまって。」
知「いや、全然。」
ふと、家族の形について考えてしまうことがある。
自分に血の繋がった家族がいたらどんなだっただろうなんて理想を描いてみたりもして。
………ありもしないのにね。
伊「薮なんでそんな怖い顔してんの?」
薮「いや別に。」
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作者名:如月 | 作成日時:2021年11月20日 19時