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伊野尾side
山「ただいまお料理をお作りいたしますね。」
そう言って厨房へ向かう涼ちゃんの後ろ姿を見つめながら、また過去のことを思い出す。
本当に、ごくごく普通の家庭だったんだ。
あんな、悪夢みたいなことが起こるまでは。
___
伊「ふわぁ……おはよ…………。
って、え……………………?」
何も変わらない、普通の朝。
"今日は平年並みの寒さです。"
寝ぼけながらつけた朝のニュース番組では、お天気お姉さんがそんなことを言っている。
ただ__________
伊「いない………………。」
両親が、消えた。
人の気配、家の中の異様な静けさ、家具の少なさ。
それだけで、両親が突然いなくなったことは明らかだった。
…………所謂、蒸発ってやつ。
誰もが訪れると思っていた、当たり前の日常が音を立てて崩れていった。
『っ、…………兄ちゃ、お母さんとお父さんはどこに行っちゃったの…………?』
母ちゃんと父ちゃんが出ていったと悟ってから、俺はどう行動したのか覚えていない。
気づけば、同じく取り残された弟と共に親戚の家に預けられていたんだ。
幸い、その親戚の叔母さんと叔父さんに良くしてもらえて、俺も弟も不自由なく生活することが出来たけれど。
『もう、お母さんたちには会えないの………………?』
寂しそうに聞く弟の姿が、今でも昨日の事のように思い出される。
________
………………両親はずるい。
自分たちの身の安全と引き換えに子供を捨てて、どこかへ逃げてしまうんだから。
正直、今でも怒っている部分はある。
偶然再開したらどんな怒声を浴びせてやろうか、なんて考えたことも。
でも…………………
家族が全員揃った最後の日。
つまり、家族全員でカレーライスを食べたあの日。
『2人は本っ当に自慢の子供たちだよ。』
突然、母ちゃんがそんなことを言い出したんだ。
どこか寂しそうだけれど、優しいあの顔で。
ふと父ちゃんの顔を見ると、父ちゃんもまた同じような顔をしていて。
もちろん、同じような日々がこれからも続くと思っていた俺にはそんな言葉が響く訳もなく。
今になって、その言葉がどんな意味を持っていたのか痛いほど伝わってくる。
………………………両親はずるい。
最後の最後まで、2人を嫌いにさせてくれなかったんだから。
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作者名:如月 | 作成日時:2021年11月20日 19時