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薮side
山「っ、……はぁっ…………。」
店を開けてから数時間。
涼ちゃんは店のバックヤードで机に両手をつき苦しそうにしている。
薮「涼ちゃん大丈夫そう……?」
山「っ、大丈夫…………。」
涼ちゃんがこんなに苦しんでいるのも、あの能力のせい。
でも、その解決方法はまだ見つけられていない。
摩っていた背中の手を遠慮がちにどかされ、涼ちゃんはまた店内へ戻っていく。
そんな涼ちゃんを心配しつつも、俺も店内へ戻っていった。
・
そして、ようやく訪れた閉店間際の時間帯。
さすがにこの時間になると、必然的に客足も遅くなるわけで。
薮「涼ちゃん、ラストオーダーの時間も終わったし、みんなドリンクの注文だけだから先に帰っていいよ。」
伊「今日びっくりするくらい混んでたもんね。
俺、違う店来ちゃったのかと思って1回店の外に出て確認したもん。」
涼「じゃあ、そうしようかな…………。」
伊「お疲れさま〜」
そう言って、お気に入りのエプロンを脱いだ涼ちゃんは帰る支度を始めた。
まぁ、帰るといっても自宅はこのお店の2階なんだけれど。
すると突然ドアに装着されたベルが鳴り、1人のお客さんが入ってきた。
薮「すみません、ラストオーダーの時間を過ぎてしまったので今日は…………。」
中「ここって過去に戻れるんですよね?」
俺の言葉を遮って、真剣な眼差しで俺を見るお客さん。
薮「あぁ…………確かに出来ますけど、うちは明日もやってるのでその時に……。」
中「お願いします!!
……………………会いたい人が、いるんです。」
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作者名:如月 | 作成日時:2021年11月20日 19時