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中島side



山「それでは、ただいまお料理をお作りいたしますね。」


過去から現在(いま)に戻ってくると、店員さんはそう言って厨房へ行ってしまう。



その間俺は過去に戻った余韻に浸り、何をする訳でもなくぼーっとしていた。



…………自分の今の思いはちゃんと彼女に後悔なく伝えられたはず。





明日、彼女は結婚式を挙げる。


それはもちろん、俺ではない人と。


でもこのお店に来る前よりずっと気持ちの整理は出来た気がした。






それからしばらく時間が経つと、


山「こちら、唐揚げでございます。」


不思議なことに俺が彼女にいつも作ってもらっていたものにそっくりな唐揚げが出てくる。


付け合せの千切りキャベツと一緒に、お皿の上に盛り付けられた6つの唐揚げは、彼女が作っていたものとやっぱり瓜二つだ。



中「どうしてこれを……?」


山「過去を振り返っていただく際に、僕自身にお料理の情報がいくので。」


"ごゆっくりどうぞ。"


笑顔でそう言い、また厨房へと戻っていく彼。


そんな店員さんを思わず目で追ったあと、俺は目の前に置かれた唐揚げに箸を伸ばした。


表面はサクッとしていて、噛めば噛むほど肉汁が出てくる。

彼女の唐揚げと全く同じニンニクが少し強めの味。


いつもなら口の周りがベタベタしてしまうから、と少し嫌がっていた唐揚げから出てくる油も、今は俺の荒んだ心を包み込んでくれる気がして、なんだか心地よかった。



中「おいし………………。」






明日の俺は、彼女の結婚を受けいれられているだろうか。

◇→←◇



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作者名:如月 | 作成日時:2021年11月20日 19時

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