第57話 追憶 ページ8
高価な工具をくれたリヴァイにお礼がしたい。
そう思い、次に会ったときに欲しいものを聞いてみようと、リヴァイが来るのを待っていた。
しかし、あれから全く音沙汰がない。
それもそのはず。ちょうどこの頃、ウォール・マリアが陥落し世の中が大混乱に陥っていた。
調査兵団もその処理に追われ、なかなか時間を作れないでいた。
リヴァイは普段から自分のことをあまり話さず、何が好きなのかわからない。
そこで思いついたのが掃除道具。箒や雑巾といった普通のものではなく、もっと特別な物をあげたい。
一緒に掃除をした時のことを思い出しながら紙にペンを走らせ、描いた設計図を元に組み立てていく。
誕生日でも何でもないのにこんなものをあげて、いらないと言われるかもしれない。
それでも何とかお礼がしたくて、貯めたお金を全部使ってオリジナルの掃除道具を完成させた。
世の中の混乱がようやく落ち着いた頃、兄が家に帰ってきた。団長になった兄は少し疲れているように見える。
兄と一緒に会いに来てくれたハンジとリヴァイ。久しぶりに会うリヴァイにおずおずと自作の掃除道具を見せた。
『…これ、工具をくれたお礼です』
「礼はいらねぇ」
『でも…貰えるものは貰っておけって、リヴァイさんが言いましたよ？』
リヴァイは苦虫を噛み潰したような顔で目を逸らした。
「せっかく作ってくれたのに失礼な奴だね。いらないなら私が貰うけど。何作ったの？」
作ったのは空気圧を利用して埃を吸い取る機械。立体機動装置の原理を取り入れて作ってみた。
実際に使って見せると、全員目を丸くして驚いた。
「すごい！掃除ができる機械、略して掃除機と名付けよう！リヴァイ、これは貰わないと損だよ⁉︎」
「ああ、これで掃除が捗る」
ハンジが掃除機に夢中になっている後ろで、リヴァイは私と目を合わせ口角をあげて言った。
「A…ありがとうな」
このとき初めてリヴァイの笑った顔を見た。
そうだ、思い出した。
あの時、掃除機を喜んでもらえたことじゃなくて、リヴァイの笑顔を見たことに嬉しくなったんだった。
私だけに見せてくれたあの笑顔
私だけが見ていたい。
ずっとそばで見ていたい。
ずっと一緒にいたい…
ずっと隣にいたい……
これからも……ずっと………
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わたがし(プロフ) - レナさん» ご指摘ありがとうございます！原作第106話「義勇兵」にて、マーレの兵士が『穢れた血』と表現していましたので、それをそのまま使用しました。紛らわしくて申し訳ありません。『島の悪魔』の方がわかりやすかったですね（汗） (12月7日 12時) (
レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - すごく面白いです！訂正をしていいのか分かりませんが、85話の話で出てくる穢れた血ではなく、島の悪魔なのではないでしょうか？ (12月7日 9時) (レス) @page41 id: f9e6be770b (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - 琴さん» 最高だなんて嬉しいお言葉、ありがとうございます！不定期な更新ですが、今後ともよろしくお願いします！ (11月27日 14時) (レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
琴(プロフ) - もう最高に面白いです！更新頑張ってください！ (11月26日 10時) (レス) @page33 id: e939615bba (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - きぬさん» コメントありがとうございます！まだまだ続きますので、今後も楽しんでいってください！ (11月20日 17時) (レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年11月2日 12時
