第63話 昔話 ページ14
松葉杖をついて歩けるようになった。医者の話によると、なぜか普通の人よりも治りが早いらしい。
それからは毎日外に出かけるようになった。身体が鈍ってしまうというのもあるが、目的は別にある。
兵舎から少し離れた場所にある広い平地。均等に並んだ石のひとつにもたれて座り込んだ。
色んなことについて気持ちの整理ができず、毎日エルヴィンの墓に来て悶々と考えてしまう。
うずくまって考えていると、ふと近くに人の気配を感じた。
「こんな雨の中何してるんだ？まだ怪我も治ってないのに、悪化するぞ」
顔を上げると、そこにいたのは花束を持ったナイルだった。言われて初めて雨が降っていたことに気付く。
ナイルはエルヴィンの墓に花束を供えた。
『…ごめんなさい…』
「気持ちはわかるけどな、お前が生きてることがあいつにとって一番の幸せなんだ。元気になってからまた来てやってくれ」
その後、ナイルに連れられて近くの酒場に来た。どうやら何か奢ってくれるらしい。
「ここはよくエルヴィンと来た場所だ。訓練兵時代からな。俺はここの看板娘に惚れて結婚したんだ」
『おめでとうございます』
「エルヴィンは本当にいい奴だ。言葉足らずの俺のために恋文を代筆してくれて、あいつだってマリーに惚れてたのにな」
『そんな話、初めて聞きました』
「妹には話せないだろ、こんなこと」
ナイルは笑ってお酒を飲んだ。
「あいつをここまで突き動かしてきたのはお前の存在が大きいんだろうな」
『エルヴィンはずっと自分の夢のために戦ってたって言ってましたよ？』
「それもあるけどな、やっぱり妹のためには死ねないって思ってただろうぜ」
『そんなに私のことを？』
「前にも言ったが、会うたびにAがああしたこうしたって自慢話聞かされたよ。よっぽどお前のことが可愛くてしょうがなかったんだな」
そんなに自慢されていたなんて知らなかったし恥ずかしい。でも自分の知らないエルヴィンを知れて嬉しくなった。
『昔のエルヴィンの話、もっと聞かせてください』
それから、ナイルからエルヴィンの色んな話を聞かせてもらった。初めて知る兄の話になんだか心が軽くなった気がする。
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《現在公開可能な情報》
No.26
Aはまだ未成年なのでお酒は飲んでない。ナイルはこの日しか休みが取れなくて雨の中お墓参りに来てた。
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わたがし(プロフ) - レナさん» ご指摘ありがとうございます！原作第106話「義勇兵」にて、マーレの兵士が『穢れた血』と表現していましたので、それをそのまま使用しました。紛らわしくて申し訳ありません。『島の悪魔』の方がわかりやすかったですね（汗） (12月7日 12時) (
レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - すごく面白いです！訂正をしていいのか分かりませんが、85話の話で出てくる穢れた血ではなく、島の悪魔なのではないでしょうか？ (12月7日 9時) (レス) @page41 id: f9e6be770b (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - 琴さん» 最高だなんて嬉しいお言葉、ありがとうございます！不定期な更新ですが、今後ともよろしくお願いします！ (11月27日 14時) (レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
琴(プロフ) - もう最高に面白いです！更新頑張ってください！ (11月26日 10時) (レス) @page33 id: e939615bba (このIDを非表示/違反報告)
わたがし(プロフ) - きぬさん» コメントありがとうございます！まだまだ続きますので、今後も楽しんでいってください！ (11月20日 17時) (レス) id: 299a057106 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わたがし | 作成日時：2023年11月2日 12時
