きっと誰もが英雄 3 (ページ5)

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目の前の闇ページ5

人生、十と何年間。生きてきた中で一番忙しい毎日がめくるめく回っている。そんな考えが頭を過ぎったり。

まともな睡眠なんて最後に取ったのはいつだったか。昨日の夜は徹夜で任務に駆り出されてた、一昨日は、いや、一昨日も任務だった。その前は書類提出だったり作成だったりで、それの前はなんだったっけ。

そういえば少しだけ鉄の匂いがする。
そうだ、今は──

｢A！！｣

｢Aさん！｣

仮免取得に向けての必殺技を練習してるのを見てたんだっけ。

あれ、さっきまでオールマイトの前にいなかった気がする。なんで動いたんだ。彼なら無傷で済むはずなのに。………あぁ、そっか。引退したんだ、ヒーロー。だからか。

しっかりしろよ、何してんだよ。

自分をそう責めて、服の汚れを丁寧に払う。さっきまでの爆発音や衝撃音がきれいさっぱり聞こえなくなったTDLの中では、Aが服をはたく音だけがこだまする。

『………なんで練習止めてんの、時間ないよ』

｢…………なんで、って……｣

｢…A、保健室行ってばあさんに治してもらってこい｣

『……何を？なんの事話してんですか？』

そう言って気付いた。全員の目が自分に向けられていることに、その多くが酷く驚いた目であることに。

そして、自分が怪我をしていることに。