過去の傷跡 ページ32
.
厨房に扉を開けて入ったボンベロは、Aを抱えたまま器用に簡易椅子を手繰り寄せ、壁を背にしてそれに腰掛けた。
「A」
ボンベロの低く響く声に、腕の中の彼女の肩がびくりと揺れる。
「…A、俺は怒ってるわけじゃない」
『………ボン…ごめ』
「それ以上謝るな、と言ったはずだ。お前に謝って欲しいわけでも泣いて欲しいわけでもない。ただ……なんだ………あー…」
眉間に皺を寄せて唸る様子を、心配そうな瞳のAが見上げる。
横抱きにしたAの左手を遠慮がちに握りながら、ただ一言「心配しただけだ」と漏らすボンベロ。
『ボン…ほんとに怒ってない…？』
「俺が怒るとどうなるか、Aはよく知っているだろう」
『……私のこと嫌いになった？』
「そうだな…いくらお前と言えど、皿に料理以外のものを乗せようものなら…そうなるかもな」
言外に"それ以外のことでは簡単に嫌わない"と宣言したボンベロに、Aの表情が少し緩んだ。
『………ボンベロは、見たことあったっけ？私の、腰の傷…』
簡易椅子に座るボンベロに抱えられたまま、きゅっと目の前のコック服を掴んで呟く。
もうずいぶん昔のはずなのに、傷跡がじくりと痛む気がした。
「…前に、重症のお前を介抱した時に一度見た。Aにしてはデカい傷を貰ったなと思っていたが…」
『ボン、気付いてたのに何も聞かないでくれたんだね…ありがとう』
「……キッドと何か関係があるのか？」
ボンベロの言葉に小さく頷くと、Aはゆっくりと口を開く。
もうずいぶん前のこと。
Aがまだ殺し屋の世界に入ったばかりで、ボンベロと出会う少し前のこと。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 410人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねこと(プロフ) - omoti_motimoticさん» 素敵なお言葉頂けてとても嬉しいです(*'ω'*)世界観やキャラクターはできるだけイメージを壊さないよう気を付けているつもりなので、そう言って頂けると活力になります！ちょっと停滞してしまってますが更新頑張りますので、また覗いて頂けたら嬉しいです♪ (2020年7月7日 2時) (
レス) id: c0f23ad842 (このIDを非表示/違反報告)
omoti_motimotic(プロフ) - ああもう素敵すぎます！！dinerの世界観やキャラクターが崩れることなくキュンキュンさせてくださって最高の作品をどうもありがとうございます、、！！ (2020年7月5日 22時) (レス) id: 96016ea486 (このIDを非表示/違反報告)
ねこと(プロフ) - えいとちゃんさん» 応援ありがとうございます！また、お気遣いもありがとうございます(*'▽'*)更新頑張りますので、また覗いて頂けたら嬉しいです♪ (2019年8月17日 8時) (レス) id: f77f241a94 (このIDを非表示/違反報告)
えいとちゃん(プロフ) - 更新いつも楽しみにしてます!!風邪などに気をつけてください！ (2019年8月15日 2時) (レス) id: 7956a8a6f2 (このIDを非表示/違反報告)
ねこと(プロフ) - アリアさん» 応援ありがとうございます！めちゃくちゃ好きだなんて…すっっごく嬉しいです♪更新頑張りますので、また覗いて頂けたら嬉しいです(*'▽'*) (2019年8月5日 16時) (レス) id: c0f23ad842 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねこと | 作成日時：2019年7月28日 22時
