君死にたまふこと勿れ

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「何が起こった！一体どうし……」

「…！Aさん！！」



音を聞いて厨房から出てきたボンベロとカナコは、ニヤニヤと笑うキッドの前で床に這いつくばり、割れた皿の破片を手にしているAに一瞬動きが止まる。


2人の声に振り返ったAの手のひらは、鋭利な破片で切ったであろう傷で血まみれだった。



「A！何してる！！」



大きな声にびくりと肩を揺らすAの元へ、ボンベロが駆け寄る。



「カナコ、救急箱を持ってこい！すぐにだ！」

「はい！」

『っ…ボン……』



ボンベロは怯えた様子を見せるAの腕を優しく掴むと、すぐ後ろのソファ席へと誘導して座らせる。


息を切らせたカナコが持ってきた救急箱から必要な薬剤を手に取り、血まみれの両手のひらと傷だらけになった膝を処置していく。



『………ボン、ごめんなさい…』

「割れた食器を素手で掴みにいく馬鹿がどこにいる！不用意に触るなとあれほど言ったはずだ！」

『ごめ…ごめ、んなさい…』



ぐるぐると両手に包帯を巻かれながら、Aは目の前で膝をついているボンベロに謝罪を繰り返す。



『ごめんなさい……せっかく作ってくれたのに……お皿も割ってしまって…椅子だって派手に倒しちゃって……ごめんなさい…こんな、こんなの…迷惑かけてごめ、なさ…』

「もういい。それ以上謝るな」

『いや…いやだ……ボン、おねがい私を見捨てないで…嫌いにならないで…！』

「落ち着け、A！」



荒い呼吸を繰り返しているAは、ボンベロのコック服の胸元を掴むと、懇願するように頭(こうべ)を垂れた。


俯いた彼女の目から、ぽろぽろと涙が溢れる。



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