君死にたまふこと勿れ

おはようレディ ページ15

.




次の日の朝、Aは寝心地の悪さで目を覚ました。



ここは陽の光が入らないので今が何時なのか見当が付かないが、頭が少しすっきりしていることから、それなりの時間寝たんだろうと推測する。


布団を剥いでベッドから降りると、目を擦りながら部屋を後にした。





『ボンー…？』



パタパタと愛用のスリッパを鳴らしながら厨房へ向かえば、既にしっかり身支度を終えているボンベロは食材の仕込みをしていた。



「起きたか」

『うん…おはよう、ボン。昨日はありがと』

「礼を言われるような事はしてない。それより、シャワーでも浴びてきたらどうだ？割と酷い顔だぞ」

『うわ、傷付く…』



シッシッと追い払うような仕草をしたボンベロは、Aの呟きなどなんのそので仕込みを続行する。


言われた通りシャワーを浴びようとシャワールームに赴き、そこにある鏡を見てAはふふっと笑ってしまった。



『…ほんとに酷い顔。クマだらけだわ』



目の下に色濃く残る隈が、なんともやつれた感を醸し出している。


汗もかいているし早くさっぱりさせようと、早々に服を脱ぎ捨てて彼女は浴室へと入っていった。









『あー気持ち良かった！シャワー浴びたらお腹空いてきちゃったなぁ…』



シャワーを終えてすっかり目が覚めたAは、きゅるると鳴るお腹を押さえながらダイナーのホールへと戻った。


ホールでは、カナコが一生懸命に床をモップで磨いている。



『おはよう、カナコちゃん』

「あっ！おはようございます…あの、昨日は大丈夫でしたか…？」

『心配してくれてありがとう。よくあることだから大丈夫』



グッと親指を立てて笑顔で答えるAだが、カナコの方は怪訝そうな顔をしていた。



まぁそりゃ…臨戦態勢で店に来た奴が、いきなり寝落ちみたいなことして"よくあること"って言ったら気になるよねぇ…？



1人うんうんと納得したAは、昨日座ったのと同じ場所のスツールに腰かけると、くるりとカナコに向き合った。



.

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す