君死にたまふこと勿れ

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『ボン…わたし……ッ』


「お前は何も悪くない……なんて言うつもりはさらさらない。お前の全ての行動は、良いも悪いもお前自身に返ってくる。この仕事をしている限り、この先も同じような事は起こり得る。その度に精神をすり減らしていたんじゃ、もたないぞ」



ボンベロの言う事は正しい。



前にも誰だったかに言われたことがある。
"細かいことをいちいち気にしてたらやってられないぞ"…と。


だけど、どれだけ経験を積んでもやっぱりこういう時は後悔の波に飲まれていってしまう。



「……A。気にするなと言っても、お前は聞かないだろうから一応言っておく。全てを1人で抱え込もうとするな。お前の身体は、十字架を背負いきるには小さすぎる。……何のために俺がここにいると思ってるんだ」



私の耳の横でゆっくりと言葉を滑らせたボンベロは、身体からもその想いを伝えようとするかのように、きつく私を抱きしめた。


ふわっと香るボンベロの匂いに、ポロポロと涙が溢れて止まらない。



「…泣くな。目が腫れて酷い顔になるぞ」

『だって、ボンがぁ……！』

「責任転嫁とは呆れたな。…そんな奴にはお仕置きが必要だ」



言うや否や、ボンベロは私をベッドに押し倒すと、そのまま至近距離で私の瞳を見つめる。


ボンベロの鋭い眼が私を射抜き、さらりと垂れた彼の前髪が頬を撫ぜた。



『ボ、ン……』

「……A」



低く静かに名前を呼ばれて、心臓がバクバクと音を立てる。


いつもと違う様子のボンベロに困惑していたら、彼はあっさりと私から身体を離して、めくってあった布団をばさりとかけた。



「…今日はもう寝ろ。ちゃんと休めたら、明日の朝また美味い飯を食わせてやる」



こちらに背を向けてベッドに腰掛けたボンベロは、それだけ言うとサイドボードに置いてあった葉巻を手に取り、マッチで火を付けた。


ボンベロは不器用だから少し分かりづらいけれど、確かにその気遣いを受け取った私は素直に頷いた。



『ありがとう、ボン。……おやすみなさい』



静かに目を閉じると、次第に眠気がやってくる。



近くにボンベロの気配を感じながら、私は安らかに眠りの淵へと落ちていった。



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