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いのちゃんは初めの方こそ俺がいることを気にしてたみたいだけど、途中からはすごい集中力で練習に励んでいた。
いのちゃんが努力なのは知ってるつもりだったけど、思った以上で正直驚いてる。
たまに軽い咳はしてるけど、昨日の体調の悪さなんて全然見せずに取り組んでて、知ってるはずの俺やマネージャーでさえ、いのちゃんの体調のこと忘れちゃってるくらい。
そんないのちゃんの様子がおかしくなったのは、昼時になり、休憩に入った直後だった。
「いのおさん、そろそろいい時間ですし。あとバク転一回やったら休憩入れましょっか」
「…っはぁ。わかりました!最後、決めます!」
できるできるって自分に言い聞かせるように繰り返して、いのちゃんがバク転の体制に入る。
みんなが見守る中、いのちゃんが宙を舞って、綺麗なバク転が決まった。
「っはぁ!やった!…っはぁ」
やった!決まった!すごい綺麗でしたよって声をかけられて嬉しそうに笑ういのちゃん。
もう休憩だし、と今まで遠慮していたその輪に俺も入ろうとしたその時だった。
「っげほげほ!ごほっ!げほげほげほ!っは、げほごほ」
「いのおさん?!」
咳き込む音と共に周りが慌て始める。
「…いのちゃん!」
「げほげほっ!ひっげほごほ、かるっ?っごほ!」
思わず駆け寄って体を支えると、右手を口に当てて体を丸めて咳き込んでいたいのちゃんの左手が俺の服をぎゅっと掴んだのがわかった。
「光だよ。大丈夫、ゆっくりでいいから。落ち着いて。ここにいるよ」
いのちゃんの左手の上に俺の右手を重ねて握ると、ゆっくり落ち着くように声をかけてやる。
「や、八乙女さん?!」
「大丈夫だから、落ち着いて。」
慌てるマネージャーにも声をかけて落ち着くよう促す。
周りが慌てたらいのちゃんも余計にパニックになっちゃうと思った。
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とびっこ - とても面白かったです!3人の絆がよくわかるお話でした。素敵なお話ありがとうございました! (2019年3月16日 8時) (レス) id: bc899b6d8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2018年2月12日 15時