【QK】オダマキに反旗を (ページ4)

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Ⅳ.ymmt ページ4

指輪を捨てた。僕が二十歳になって、家族や後輩からおめでとうの言葉をもらい、先輩や既に誕生日を迎えている同輩からの祝いの酒をあける中で店をそっと抜け出して、道端の排水溝の中に銀色の指輪を捨てた。何食わぬ顔で店内に戻ると、今更ながらに水音が聞こえなかったことに気づいた。

煉炭だったと噂話を聞いた。夏休み明けの話だった。痛いのが嫌だと言っていたから、君が提案したのかもしれない。父親の見栄と欲のツケとして抱えた借金を家族全員で背負いながらも必死に頑張るその姿に恋をして、必死に告白をした。今考えると、本当に馬鹿な中学生だと思う。家族で手一杯なのに余計な重荷を背負わせているのだから。それでも優しい君は、制約付きだけどとはにかみながら受け入れてくれた。

でも君は、僕が誕生日プレゼントと称してあげた少しだけ高いペアリングをつけなかった。普段の生活ではなくて、車の中での話だよ。その理由が気になっていた。君のことだから、本当に大切なものはつけられないと言って手紙と一緒に机の上に置いたんだろう。僕宛てのそれは優秀な警察によってちゃんと僕の元へ届いたのだから。

「ちょっと、僕が主役ですよ！」

何処からか投げられた瓶に虚しくなった。この非生産的な会に金を払うのだ、僕は。彼女があんなに必死で働いて稼いだ金は結局足りなくて、最後は炭に変わったのに、僕はこうしてたいして好きでもない嗜好品に金をかけている。

あの日からずっと、僕の指には二連リングが付けられている。本来分け合って使うそれを同じ指に無理やりはめて、19最後の日に外すと真っ赤な跡を見つけた。もしかしたら君はこれを狙っていたのかもしれない。もしもそうだとしたら凄く嬉しいんだ。それくらい僕を好いていた証拠になるから。そう思って、不意に自分に愕然とした。残された指輪は僕を君にしばりつけるための最後の手段だと思っていたけど、実際は君を僕に縛り付けるための身勝手な欲望だった。絶えず誰かのために従事していた彼女は、死後も僕の妄想に囚われていた。

でも、もうそれも終わりだ。僕は二十になった。成人して選挙も飲酒も喫煙も可能になった。あの夏に取り残されたままの僕とはここで一旦、さようならをする。数年後か数十年後か分からないけど、思い出の中の君を自由にすることが出来たらいいなと思う。そうして天寿を全うして天国で君に逢えたら、もう一度告白したいんだ。それくらいの欲望なら、良いかな？