酸いも、甘いも。 ページ30
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【酸いも、甘いも。】
「ごめん、悪かったよ」
「そうやって、謝ればええと思っとるんや」
「ほんと悪かった。許してよ、廉」
小さなことでも、言い合いになるのは昔から苦手だ。
この状況を長引かせたくもないから、いつも謝るのは俺。
毎度このやりとりをして、いつの間にか仲直りをする。
誰も傷付けたくない一心から自分を犠牲にしてしまうのは、きっと子供の頃からの癖。
「…しょおって、いつも自分ばっか謝って、反論せぇへんよな」
まぁ今回はしょおが100%悪いけどな、と付け加えて。
廉も一瞬は怒るが、切り替えは早い。
「あんまり、喧嘩ってしたくないんだよ」
「せやけど、付き合ってたら喧嘩は付き物やん、誰だって」
「うん、でもなるべくなら、平和でいたい」
せっかく愛しい人と一緒にいる時間に、嫌な気持ちになんかなりたくないし、させたくもない。
その為なら、俺は何回だって謝るし、自分を抑え込められる。
それで誰かを失うのが一番、こわいから。
「…喧嘩せんのが平和とは限らへんと思うけどね。
本音でぶつかり合って、お互いを知ることが出来るんちゃうの」
本音で、ぶつかり合う。
そんなことが出来ていたのは、いつだったろうか。
物心ついた時から、常に周りの大人に気を遣って、人の目の色を伺って、それが当たり前で生きてきた。
波風の立たない、綺麗な人生を自分なりに考えてやってきたつもりだ。
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作者名：moca | 作成日時：2020年2月16日 12時
