愛と感謝 (ページ28)

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何で突然？俺の家？
疑問は沢山あったが、冷静を装い、マンションまでの道を一緒に歩いた。
幸い深夜だったから、周りの目は気にせず歩けた。

「…ちょっと、散らかってるけど」

廉をリビングに通して、部屋着に着替える。
さっき買ってきたお酒と、家にあった缶ビールを差し出す。

「……俺初めて来たわ、しょおんち」

「そっか、廉は初めてだっけ」

「おん。……今日みんな、どこ行ったん？」

「焼肉行って、カラオケ行った。結構盛り上がったんだよ」

いつも以上に神宮寺のテンションがおかしかったこと、岸くんがお酒を一気飲みしてむせ返ったこと、海人が酔っ払って更にめんどくさいやつになったこと。

どれも思い出すと笑えてきて、廉に話しながら2人で笑った。

「ほんと最高だよ、あいつら」

「…ほんまやね。話だけで笑えるわ」

「でもさ、廉がいたらもっと楽しかったよ」

思わず心の声がそのまま出てしまった。

廉は少しびっくりしたような顔して俺を見た。

「……それ、ほんま？」

「…ほんま。…廉がいないのは、寂しい」

廉は黙って差し出した缶ビールのプルタブを引く。
プシュッと炭酸の抜ける音だけが部屋に響いた。

そういえば、こうやって2人きりで話すのなんて、いつぶりだろう。

「……しょおが、そう思ってくれとるなんて思わんかった…」

開けた缶ビールをゴクゴクと半分ほど一気に飲んだ廉は、缶を置いて沈黙を破った。

「……たまに、俺の居場所分からなくなる時あんねん。学校行きながら仕事するって、自分で決めたんやけど余裕なくて。
…しょおも、みんなもどんどん先に行ってしまうような気がして、不安やった」

「…うん、」

「…大学の友達とおると仕事のこと忘れられるからって、みんなから逃げとった。
正直、仕事辞めて普通の大学生活送ろうかなとか、考えたりもした。
しょおはそう思ってくれとんのに…
最低よな、俺」

はは、と悲しく笑う。
廉は昔から悩みは一人で抱え込んで、考え込む性格なのは知っていた。
だけど、そんな廉に気付けなかった自分が、悔しかった。

俺は、"現役大学生"の廉だけじゃなくて、いつも隣にいた廉のこと、何一つ分かってなかった。

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