拝啓、あの日の君へ ３ 【Snow Man】

遅かった言い訳 ページ27

顔が丸くなって行くこと。
指の関節の痛みや腫れ。
ひどい身体の倦怠感に、節々の痛み。
だるいと思えば発熱している時もある。
自分に合う薬や治療法を試行錯誤して、それでも身体の不調は不意に訪れるから、予測なんてものは出来なくて。
個人の仕事は意地でもやり遂げたくて最後まで踏ん張るけれど、グループで集まった瞬間、全部の力が抜けるように顕著に出る不調に、私自身も辟易していた。
だけど、後少し、もう少し。
そう思ってやってきたのが、多分甘かった。
不信感を持たせてしまっているのは薄々勘付いていた。
ふっかさんや国王の様子を見ていれば何となくわかる。
だけど、






『後、少しだったんだけど、な……』






誰も来ないだろうな、と思いながら、レッスン室とは別の階にまで降りて自販機で水を買う。
隣に併設されたベンチに腰掛けて、深く息を吐いた。
多分、今までの私なら、分かってもらえなくても認めてもらえなくても、受け入れてもらえないなら仕方ない、って諦めていた。
だけど、みんなのせいで今はもう諦めたくない、と思ってしまう。
ひとりにしないで、置いていかないで。
寂しい、苦しい、お願いだから離れていかないで。
どんな私だって必要だって、言って欲しい。






「みーつけた」
『……ラウちゃん』
「俺もここで休憩しようかなあ」






何も言わない私の横で、ラウちゃんが困ったように笑うのが分かった。
伝えたいことがある。
届けたい気持ちもある。
言いたいのに言えない言葉が胸を抉っている。
本当は泣きながらみんなに縋って助けを乞いたい。
身体がまた、いうことを聞かなくなってきたんだ、って泣き出してしまいたい。
だけどそれ以上に、私は私に期待をしたい。
まだいける、大丈夫って、期待をしたい。





「俺、今のAちゃんのこと、何もわからない。だけど、これだけは伝えたいなって、思って」
『……なあに？』
「俺は、Aちゃんと一緒にデビューしたいよ」
『それは、私もだ』





泣きそうな顔をしながら笑っている目の前の少年に、私が泣きそうになった。
ラウちゃんは、いつだって丁寧だと思う。
人に対して、とても丁寧だと思う。
優しいとか、親切であるとかが霞むぐらい、人に対して丁寧でいるというのは大事なことだ。
誰に教わるでもなく、それが最初から備わっているラウちゃんだからこそ、ちゃんと応えないといけないな、と思う。
もう少し先で言うつもりだったけれど、仕方ないよ。
最年少に、こうやって求められてしまったんだから、ちゃんとケジメをつけないといけない。

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