． ページ26
やっぱりアイスコーヒーの方が先に来てしまった。
アイスを待つ間、グラスは汗をかき始めて氷がカランと音を立てる。
何か話があるのかと思ったけれど、Aは全く何も話さないし、俺のアイスコーヒーを見つめているしで、余計にどうしようもない気持ちになる。
頼むからアイスコーヒーからは目を逸らして欲しい。
「お待たせいたしました」
『ありがとうございます』
ごゆっくり、と言って、店員さんが俺たちの席から離れる。
アイスは5つのフレーバーがあって、バニラとイチゴ、チョコ、ピスタチオ、マンゴーのようだ。
Aは小さくを手を合わせて、イチゴから食べ始めた。
俺もそれにならって、ようやくアイスコーヒーに口をつける。
ぼーっとAの食べているところを見ていたら、Aが静かに見返してきた。
「何だよ」
『……最終的にはきっと、全部うまくいくと思ってる』
「？、うん」
『最後の最後はきっとハッピーエンドだよ』
世界は、そういう風にできてるの、とAがポツリと呟いた。
だから、今が多少辛くても何とかなるよ、いっぱい心配かけたけど、もう大丈夫、って、伝えたくて、とAが続ける。
心配、させてくれよ、と思う。
関係ないなんて思うわけない。
いつだってどこにいたって、Snow Manというグループに、Aの存在は絶対なのに、どうしていつも一線引いて遠くから俺たちを見ようとするんだよ。
もっと、巻き込んでくれよ。
もっと、俺たちに巻き込まれろよ。
もっと、もっと、
「頼ったら良い」
『へ？』
「前からずっと言ってる。思ったことを言えば良いし、声をあげて良い。真剣に助けてって言ってくるやつを、投げやりに相手するやつなんて、俺たちの中にはいねえよ」
『……もっと、ひとりで立てるくらい強くなりたかった。怖がりな自分を、大丈夫って、抱き締めてあげられるくらい強くなりたかった。なれなかったけど、それでも、みんなが諦めない私を、私が諦めて良いわけなかった』
たくさん、迷惑かけてごめん、とAが眉をハの字にしながら言う。
それから、信じてくれてありがとう、と続ける。
やっと、ちゃんと届いたのかもしれない。
俺たちが、どんな覚悟でAを受け入れようと決めたのか。
店員さんがシェア用に置いていったスプーンでアイスを掬った。
Aの食べたいと言っていたバニラは溶けてぬるくなっている。
それを見て、心底楽しそうに溶けちゃった、と言うAは、きっともう、本当の意味で大丈夫なところにまで上がってきたのだろうな、と思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 728人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ラムネ(プロフ) - はじめまして！私もSLEを患っているので、もしかして？と思いながら読ませていただきました！！とても続きが気になります！更新楽しみにしていますね！寒さが続きます、お互いに体調気をつけましょうね！！ (2023年1月9日 16時) (
レス) @page13 id: 09897084bf (このIDを非表示/違反報告)
小夜(プロフ) - ‪‪❤︎‬さん» ❤︎様、返信が遅くなり申し訳ございません。言葉が好きだと言っていただけて、とても励みになります。ファンレターの内容も、試行錯誤しながら書いたものですので感動していただけて嬉しいです。続編も今しばらくお待ちください。感想ありがとうございました。 (2023年1月7日 23時) (レス) id: 21e7727b2a (このIDを非表示/違反報告)
小夜(プロフ) - ラデュレさん» ラデュレ様、返信が大変遅くなり申し訳ございません。共感しながら読んでいただけて大変嬉しいです。私も同じ病気ですので、少しでも明るく楽しく前向きになれるような作品が作れるように精進して参ります。感想くださり、ありがとうございました！ (2023年1月7日 23時) (レス) id: 21e7727b2a (このIDを非表示/違反報告)
❤︎ - たまたま関連作品で流れてきて読み始めたのですがとても小夜さんの言葉が好きで一気に読み終えてしまいました😭😭😭ファンレターの文章がとても素敵で私まで感動しました笑 更新大変だと思いますが楽しみにしてます🤝🏻 (2022年11月19日 13時) (レス) @page38 id: 30d4e1ac00 (このIDを非表示/違反報告)
ラデュレ - はじめまして。ふとお話に目がつき読ませて頂きました。私自身もSLEを患っているのでとても共感(?)して読んでしまいました。これからも更新を楽しみにしています。 (2022年10月24日 23時) (レス) @page13 id: 48ef0c5d55 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小夜 | 作成日時：2022年10月7日 23時
