拝啓、あの日の君へ ２ 【Snow Man】

． ページ20

もうダメしか言わない鳥ちゃんは、気付いたら俺にファンレターを押し付けてくる。
私じゃとても読めないから代わりに読んで、なんて言うものだから頭を抱える。
どう考えたって本人が意地で読むべきやろ。
そうは思っても、顔を手で覆って本格的に泣き出している鳥ちゃんを前に、そんなことは到底言えるわけもなかった。






「どこから読めばええんよ」
『つ、づき、』
「どこまで読んだか教えてや」
『3枚目の最後……、っ」






思い出し泣きせんとって！と言えば、無理ぃ、と小さな蚊の鳴くような声が聞こえる。
3枚目をめくって、4枚目から読み上げる。
あかん、俺まで泣きそうや。
文章に溢れ出る、励ましの声、応援の声。
たった一通やけど、こんなにも力のこもった一通を、俺は知らなかった。
泣いてしまうの、めっちゃ分かるよ。
こんなにも逞しい言葉で応援されてしまったら、もうやるしかないって思えるよな。
鳥ちゃん、もう後戻りできひんねんで。
やるしかないねん、俺たちは。
女だからとか、年齢がとか、体型がとか、もう何もかもどうでもいい話やねんで。
俺たちはこうやって、真っ直ぐに伝えてくれる誰かのために、必死になるべきやろ。
不特定多数の悪意なんかで、挫けたくないやん。
誰の視線から自分を守れば良いのか、そんなこと、もうきっと考えなくて良いんやって。







「【Aちゃんに心無いことを言う人がたくさんいると思います。私はそういう言葉を見るたびに、もっと怒って良いんだよ、と思っていました。笑顔で私たちに語りかけるAちゃんを見るたびに、誰か守ってよこの笑顔を、と思っていました。でも、怒りはいつか恨みに変わってしまうかもしれなくて、それがとても怖いです。だから、笑えないくらい誰かに対してAちゃんが怒って、それが恨みに変わったら、その時は私が真っ先に言ってあげたいです。もう誰のことも恨まなくて良いんだよ、って。Aちゃんの存在に、何度も助けられて来ました。私のファンレターがAちゃんを助けることはできないかもしれないけれど、Aちゃんのことを私はずっと応援しています】……っ」
『こーじく、んっ、が……、どうして泣いてるのっ、』
「あかんって、こんなんあかんって！何で俺が先に読んでるんよ！あかんってぇえ」







ラジオブースは涙に濡れている。
なあ、鳥ちゃん。
理不尽に傷付くこといっぱいあるよな。
でも大半は、鳥ちゃんが悪いんやなくて、相手が弱かっただけやねんで。
そういうことに、早く気付けたらええよな。
そんなことを思いながら、俺もとうとう声を上げて泣いてしまった。

ささやかな優しい日常→←．

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す