拝啓、あの日の君へ ２ 【Snow Man】

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俺がもちろんOKを出せば、鳥ちゃんはどこか緊張の走る顔で、封筒をゆっくりと開けていく。
何で持ち歩いているか分からない小さなカッターが、ゆっくりと封を切っていく。
緊張した時の俺に似てる震えた手は、ゆっくりと中の便箋を取り出した。
分厚めのその便箋は、中身の見えない俺でも丁寧に丁寧に文章が綴られていることが分かる。
鳥ちゃんは、それをそっと右手側に置いて、封筒の中身を再度確認した。







「何でもう一回確認するんよ」
『……、なんか、癖づいちゃって、』
「…あ、そうやんな、ごめん、今のはちょっと無神経やった」
『こーじくんはアウト寸前を走っていくくらいが丁度いいよ』







それ全然褒めてないで、と言えば、幾分穏やかに鳥ちゃんが笑うから、怒ってなんかいなかったけれど、何もかもどうでも良くなってしまった。
俺たちの職業が、相手のニーズに応えていかなければいけないものであることは百も承知だ。
需要と供給を考えるというより、ひたすらに需要を考えているイメージがある。
自分に返ってくる供給の何と少ないことだろう、と嘆きそうになることもあった。
だけど、それ以上に、今は仲間に恵まれたことこそが、自分にとっての最大の供給だったのだろうな、とも思う。
燻っていた関西の自分を、ここまで連れて来てくれたメンバー全員に、何度感謝を述べても足りない気がした。







『………ダメ、だ』
「え？！何？！どないしたん？！」
『ダメ、本当に、ダメ、』
「鳥ちゃん、」






分厚いファンレターにいくつものシミを作りながら、鳥ちゃんが泣いている。
でも、その表情は驚くほど穏やかで、美しいと思った。
良かったなあ、鳥ちゃん。
やっと、鳥ちゃんの魅力が、伝わったんやなあ。
ずっと頑張ってたの、俺、知ってるもん。
俺たちが分かっててあげれば良いって、どこかで思ってたけど、自分以外のファンレターにここまで心を震わされたのは初めてやで。
鳥ちゃん、もう大丈夫。
もうこれからは、ファンも味方につけて、戦うんよ。
俺たちはもう、戦場に放り出されて、自ら武器を生み出さないと息絶えてしまう世界にいるんやから。







『もう全然、読めない……』
「なあ、待って？まだ3枚目やん。後どれだけ残ってるんよ」
『後3枚、』
「まだ折り返しやないか！！クライマックスちゃうのによくそこまで泣けんな？！」







収録、大丈夫そうですか？とスタッフが心配そうに声をかける。
ちょうど俺たちが最後の収録だ。
少しだけ時間ください、と言えば、スタッフたちは笑顔でOKを出してくれる。
鳥ちゃんの魅力は、どんどん広がっている。

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