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控え室へ向かう途中、
｢A。｣
｢…しょう兄。｣
相変わらず包帯グルグル巻きで痛々しそうなしょう兄に呼び止められた。
さっきの勝己とのやり取りで何だか気分が落ち込んでいた私、しょう兄はいつものテンションでは無い私に直ぐに気付き、｢…どうした。｣と聞いてくる。
｢何にもないよ。｣と言ったけれど、｢嘘つくな、俺を騙せると思うなよ。｣と言われて、諦めて先程の出来事を話す。
｢成程、爆豪を泣かせるとは中々やるな。｣
｢そういう問題じゃないよ、しょう兄…。｣
｢まあでも、爆豪の気持ちは分かる。お前は無茶ばっかりだからな、昔から。｣と言われて何も言えなくなった。
…無茶をしていたつもりは、無いのだけれど。
そこで、思い出す。
USJで死柄木と対峙した時、直ぐに逃げなかったこと。自分の弱さで、個性を暴発させたこと。心配してくれるみんなを他所に、しょう兄を探しに行こうと暴れたこと。
…私ヤバいな、そりゃ心配もさせるか。
『警戒心を持て！』と叱ってくれた勝己を思い出す。
｢しょう兄…。私警戒心ないのかなあ。｣
｢間違いなく無いな。｣
｢ええ…。｣
そりゃ、敵には警戒心マックスだけれどさ。
常に警戒心持ってるのは少し難しいよなあ。
｢まあでも、自分で自分を守るのは勿論だが、お前にはA組皆がいるだろ。アイツらなら必ず助けてくれるよ。爆豪もお前を守る気は十分ある筈だ、ただただ心配なんだよ。｣
｢…うん。そうだね。｣
｢だから、そんなしょぼくれた顔するな。｣と優しく言ってくれるしょう兄。
｢ただ…。｣とそう言って急に私との距離を詰め始めるしょう兄。
｢『抱き締められた』っていうのは聞き捨てならないな。｣
｢え、あの。｣
｢男に簡単に抱き締められてんじゃないよやっぱり警戒心ないな。｣と言いながらどんどん壁へと追いやられていく私。
だが、同じ手は食らわんぞ？
ヒョイッと横に飛び退き、廊下を走り出す。
｢あ。｣としょう兄の声が聞こえ、｢ははっ！｣と声を出して笑う。
｢同じ手は食らわないよしょう兄！ありがとう！元気出た！頑張る！じゃあね！｣
顰めっ面をしたしょう兄を置き去りにして、控え室へ向かって走り出した。
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作者名：HamA | 作成日時：2020年9月1日 16時
