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満員電車の中
目の前にある大きな背中と
くらくらするくらい
だいすきな匂い
「 危ないからつかまっててね 」
そう言って
後ろにいるわたしの手をとった彼は
その手を、
彼の腰に回して
自分の服の脇腹のあたりを握らせる。
わたしの手の上に重ねられた
彼のあったかくて大きい手
顔があつくて、
なんでこんなことするの?とか
わたしのことどう思ってるの?とか
色々とあったはずの
考えるべきことはすべて飛んでしまった。
だって、ずっとこうしたかったの。
背中を見るたびに
後ろから抱きしめたいな って
降りる駅について、ドアがあいて
重ねていた手をそのまま引かれて
電車のドアから2人だけ出る。
スンさんが振り返って、
わたしたちは、向き合って
わたしの両手を、両手で包みこむスンさんの、
わたしを見つめる目が
優しくて、あったかくて、すこし緊張していて
だいすきだよ、って言われているみたい。
見つめあうのが恥ずかしくて、
ふたりで少し笑ったあと
「 ゆずちゃんのことが すきです..
お付き合いしてください 」
赤くなった耳が、
さわやかでかっこいい笑顔が、
ちょっと恥ずかしそうなのが、たまらない。
ずっと、すきって言いたくてしょうがなかったの。
ハグもしたかったし、キスもしたかったし
もう、我慢しなくていいなんて。
両手を広げてハグ待ちをするスンさんの姿に、
つい、突進しそうになってしまった。
今だからわかる、
初めてのハグは、木の香り。
スンさんの、
とっておきの日の香水の香り。
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作者名:は | 作成日時:2020年10月16日 1時