＊ ページ8
【過去】
「いやぁ、俺ァさァ・・・対して生まれも良くないっつーか。」
嘘。実はそこそこの名家生まれだ。親父は社長。お袋は家柄がよく、才色兼備。器量もいいため周りから好かれてた。
そんなすげぇ人の間に生まれたのが俺。
「幼い頃は・・・というか今でもなんだけど、さァ。蝶よ花よと愛られてたワケ。・・・っぱ俺きゅん可愛いからサ」
たださ、親に問題があったんだわ。
所詮親も人な訳で。
側から見てすげぇいい夫婦は、実はそうでもなかった。
俺が小学生になった頃はもう親父もお袋もほとんど話さなかった。
親父は親父なりに俺を連れ出してくれた。
お袋はお袋なりに愛してくれた。
でも、
「俺はさァ、」
家族で居たかったんだよなァ
皆んなみてぇに、ピクニックとか、外出とか、いつかできるって。そんときは思ってたんだよ。
だけど、ある日。
俺のことを見る目が急に変わったんだわ。
小さい頃に術式があることを自覚して、顔に模様が浮き出たんだよ。
お袋は、何かすげぇことだと思ってさ。
信じたんだよ。
「アァ、神の力ってやつ？？俺も良くわかんねぇんだよ」
気づいたらいろーんな人に囲まれてあれよあれよと乗せられて。
神の子だとか、神の使いだとか。
天使の子だとか。色々好き勝手言われてさ。
「気づいたら近所から全国に広まっちまってさ。なんつーの？百聞は一見にしかず？そんな感じで人いっぱいきちまってさ。」
「お金ワッサワサもらうし。お菓子しかねーし。車もらったし。いらねー、って感じなんだけど」
俺がそうなってから俺の前でも、前でなくても親が話すようになった。一緒に出かけるようになった。
「ガキなりにクソほど嬉しかったんだよ。俺のおかげで親が一緒にいるっつうのが。」
でも、話してる内容は残酷で。耳を塞ぎたかった。
学校へ行けなくなったのが嫌だった。
友達は家に来てくれなくなった。
男の友達がいなくなった代わりに、女子が集るようになった。
親の話を聞いてかしらねぇけどさ。
「琴樹くんに話聞いてもらうと、すごーく楽になる！いつもありがとう」
「琴樹くん、本当に見えるんだ・・・すごい！！あ、ねぇねぇ、私の未来今見れる？」
「うん、見てあげるから、座ってほしいな」
その話をすると、親はますます喜んでくれる。
俺の力に信憑性が出る。回数を重ねれば重ねるほど。
親が働かなくてもいいほど、俺だけで金が入った。
親は嬉しそうだった。
親が抱き合ってる姿も見た。
でも、俺は何一つ嬉しくなかった。
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