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「え、っと…」

お金を受け取ろうと伸ばした右手が掴まれている。強い力で。痛い。

「Aちゃん、」

怖い。痛い。こんな時の対処の方法なんて分からない。刺すような顫動が背中を駆け巡る。

遊びでこんな事をしてきたからバチが当たったんだ。

でも、いざ自分が恐怖の淵に立たされると自分を守りたくなるモノなんだなって。
その男が私の手を掴んでない方の手でカバンを探って何かを取り出した。

「これ。Aちゃん…一緒にやろうよ。」
「な、にそれ。」
「気持ちよくなれるやつだよ?」



ニヤリと脂汗をかきながら笑うその姿に全身の血が一気に冷めたのが分かった。

…逃げなきゃ。
思いっきり手を振り払って、乱雑にカバンを掴んで。ヒールなんて置いてく、怖くてただガムシャラにその場から逃げた。

エレベーターのボタンを乱暴に何回も押す。早く、早く…!!焦る気持ちが涙となって溢れ出てくる。
一階に着いて私は裸足のまま駆け出した。
どこに逃げたらいい?そんなの考えられなくてただ、ひたすらに走った。



「…っ、はぁ、…」

足の裏も痛い、口の中が鉄の味をしてる。カップルが私を人の悪い笑みを浮かべながら笑っていた。

ホテル街を抜けた所直ぐにあったお店と何故か私は入った。
本当に何故か惹き込まれるように。助けて。そんな気持ちで。


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作者名:とぅーか | 作成日時:2020年7月4日 10時

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