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8.また,明日 ページ8

太宰からの突然の言葉に,彼女は右目と口を真ん丸に開いて立ち尽くす。


「はい?」


「いやだから,探偵社に来ないか? って訊いてるの」



「無理です」



彼女は即答した。
もう何時もの彼女に戻っている。


「今の仕事は関係無い」


「判っています。
 35人殺し,探偵社に入ったんですよね?」


「嗚呼,そうだよ。
 だから君も……」


「何故そうなるんですか?
 私とあの子では凡てが違い過ぎます」


「そんな事――」

そんな事は無い,と云いかけた太宰の言葉を遮り,畳み掛けるように彼女は続ける。


「私はポートマフィアの構成員です。
 命令されれば今ここで貴方を殺す事だって厭いません」


「……。
 そうかい。
 よく,解ったよ」


「御免なさい」


「何故君が謝る?
 謝るのは私の方だよ。
 御免ね,A。
 君を置いて行ってしまって。
 君が望むのなら,武装探偵社は何時でも社員募集中だから」


「ありがとうございます」


頭を下げ,去って行こうとする彼女の腕を,太宰が掴もうとする。

彼女は振り返り乍らその手を躱す。


「ねえ,A。
 何か,私に隠してない?
 そう云えばさあ,なぜ森さんは君が死んでもないのに私に電話して来たんだろね」


太宰の目が,獲物を狩る前の蛇のように細められる。


「……。
 それは,私が頼んだからです。
 私は貴方の補佐でした。
 貴方はもう光の世界に居るのに,私が生きていると思った儘ではポートマフィアという軛から逃れることは出来ない。
 そう思ったからです」


「元々逃れようとも,逃れられるとも思っていないさ」

太宰が自嘲気味に嗤って云う。


「……。
 私が死んだと聞いた時,ホッとしたのではないですか?
 自分が組織に残してきた足枷が,もうこの世に居ないと知って」


彼女が,まるで合成音声の様に無機質な声で訊ねる。


「そんな事……。
 そんな事,ある訳ないだろう?!」


珍しく感情的になっている太宰を,彼女は不思議さと驚きの表情で見遣る。


「……。
 すみません。
 もう時間なので。
 戻ります」


「A,明日も会おう。
 まだ話したい事が沢山あるんだ」


「……わかりました。
 また明日(・・・・)



歩き出した彼女の小さな背中は,雑踏に紛れて直ぐに見えなくなった。




_____________________________________________

前の話結構直したり変えたりしてます。
<(_ _)>

9.その海は→←7.生きていますので?



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SEA(プロフ) - 村人Cさん» コメントありがとうございます。全然更新してなくて本当に申し訳ないです……。頑張ります! (__) (2023年2月10日 23時) (レス) id: 40e007873e (このIDを非表示/違反報告)
村人C - 更新楽しみにしてます (2023年2月9日 22時) (レス) @page23 id: 5242a52298 (このIDを非表示/違反報告)
SEA(プロフ) - 南無いちさん» コメントありがとうございます。おかげさまでめっちゃ頑張れそうです笑 これからもよろしくお願いします! (2022年12月27日 16時) (レス) id: 40e007873e (このIDを非表示/違反報告)
南無いち(プロフ) - 切ないのに甘くて最高です!!!if編も読めるなんて感激です!!更新楽しみです!!頑張って下さい!! (2022年12月27日 16時) (レス) id: b659a75de8 (このIDを非表示/違反報告)
SEA(プロフ) - エリスさん» コメントありがとうございます。最近更新できていなくて申し訳ないです……。良いものが書けるよう頑張ります。 (2022年12月27日 12時) (レス) id: 40e007873e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:SEA | 作成日時:2022年11月26日 12時

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