抱き締めてください，太宰さん

番外編 if.3 ページ19

私の異能力は，死んだ人間の時間のみを，致命傷を与えられる前の状態に巻き戻し，その人を15分間だけ生き返らせる事が出来る能力だ。

15分経つと，巻き戻った時間が元に戻り，その人は死ぬ。


ただ，異能力が使えるのは外因性急死の場合のみで，尚且つ死後2分以内でなければならない。



私は，この異能力を自分が死んでからずっと，自分に使い続けている。

今から七年程前，私が子供の頃，家族を殺された。

その男に復讐する為相手を路地に呼び出した私は，一度そこで殺された。

太宰がポートマフィアを抜けた一か月後だったから，今から四年程前。

その後，自分自身に異能力を使って男を殺した私は，太宰に逢う為だけに生き返り続けた。


1時間に4回×24時間×365日×4年間


異能力を，自分で止めれば良いだけだった。

でも，私は自分で死ねない程に生に憑りつかれ，にも拘らず毎日死にたくて死にたくて仕方がなかった。


太宰の顔を見てから死にたい。

そう思って生き返り続けた。
太宰に会ったら死ぬ。

でも。
そう決めていたのに。

もっと話したい。
もっと一緒に居たい。
死にたくなかった。

また明日，と，云って仕舞った。



太宰の事が好きだった。

自分の気持ちに気付くのには凄く時間が掛かったけれど。


好きなら何故，傍に居なかった？

一緒に光の世界に行くかと誘われた時，何故その手を取らなかった？

解らない。


でもそれは，自分と太宰が交わることは出来ないと，心の何処かで判っていたからなのかもしれない。






暫く太宰に会い続けた。

15分したら一度死ぬから，何時も話すのは10分程。

マフィアは辞めていた。

異能が使えなくなっていたし，皆に迷惑が掛かると思ったから。




そんな折，名探偵から声を掛けられた。




「ねえ君。一寸駄菓子買いに行くから付き合って」



「はい？」

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