抱き締めてください，太宰さん

12.手紙 ページ12

「太宰！
　貴様はまた遅刻か!!」


「国木〜田君今日も朝から元気だねえ〜」



時間は，待ってはくれない。

自分が，走って，走って，走って追いつく。



「そうだ，太宰。
　何時も来ているあの女性から，お前への手紙を預かっている」


「ええ〜何それ。
　私昨日の夜振られた許りなのだけど」


「おお，それは残念だったな。
　まあ，取り敢えず受け取っておけ」


「太宰」


乱歩が，国木田から手紙を受け取った太宰に焼き菓子を食べながら声を掛ける。


「何ですか？ 乱歩さん」


「一寸来い」


椅子から下りて外に出る乱歩を，太宰は慌てて追いかけた。





「太宰。皆に云わないで良いのか？」


「矢張り乱歩さんは最初から気付いていたんですね」

「確信は無かったがな。
　お前が振られた，と云うのを聞いたからだ」


「そうですか……。
　皆には云いません」


「そうか。わかった。
　なら僕もこれ以上訊かない。
　その手紙はちゃんと読んでやれ」


「フフフ。わかっていますよ」


太宰は柔らかく，悲しそうに笑った。



「じゃあ僕は駄菓子買って来るから。
　階段上る時だけ荷物持って」


「判りました。
　ありがとうございます」



太宰は，手紙を開いた。

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