6 ページ28
＊
そこから、なんだか落ち着かなくて。
そわそわとお店の中をうろうろしていた。
浴衣が崩れないように、髪の毛が崩れないように。
それだけなんども確認しながら。
………………カラン
「Aちゃ………、え？」
鍵だけ開けてCLOSEにしていた店先、少し重たい扉を潜り抜けてきたのは、約束の相手。
そんな彼は私を見るなりびっくりした顔をしてこちらを見ていた。
「おめかしって、これじゃ…なかった、ですか？」
「大正解」
はにかんで笑った顔は、恥ずかしくて真っ直ぐ見れなかった。
ふわりと取られた右手は、自分のものではないみたいで。
そのまま促されるままに店を後にする。
少し古い鍵を扉に差し込んで引き抜いてから向けた視線の先には。
「えっ、」
お店の前に、見慣れない車。
「ごめんなあ、ほんまはこのまま一緒に歩きたいねんけど、」
今日は、これで許してほしいねん。
そう言う彼を見ながら。
やっぱり浴衣はやりすぎだったかなあ、って少しだけ自信がなくなる。
ただのドライブに浴衣を着てきてしまったのなら、今すぐ着替えるから教えてほしい。
(………やけ酒、朝まで付き合ってもらいますからね……、)
心の中で悪態をつきながら、助手席に乗った。
いや、後部座席に乗ろうとしたんです、私は。
そしたら何でやねんって、怒られたんだもん。
なんなのこのお兄さんたち。
わたしの心臓、鋼かなんかでできてるとでも思ってる？
慣れないことをしすぎて、キャパシティなんて等に限界。
車内には、スピーカーから聞いたことのないパーソナリティの声が小さめの音で流れている。
少しずつ日が短くなった空には、太陽が傾いていて、眩しい。
そんな中を、キラキラした大好きな人の横顔を見つめながら過ごす時間は、何時間にも感じられた。
丸い色付きのメガネ越しには、どんな風に写ってるんだろう。
しょうもないことを考えながら、やっぱりぼーっと見つめ続けていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きゃめ(プロフ) - HanNAさん» わー！ありがとうございます！長々引っ張ったけど花火のシーズンに終われてよかったかなって思ったりします笑 りんご飴いいですよね！食べるたび妄想に使ってもらえたら嬉しいです^_^ (2021年8月17日 12時) (
レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
HanNA(プロフ) - きゃめちゃんおつかれさまでした…！リンゴ飴食べたくなっちゃいました☆ (2021年8月16日 18時) (レス) id: 9d1b7de85f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きゃめ | 作成日時：2020年10月14日 17時
