誤魔化したそれぞれの気持ち1 ページ11
＊
「Aちゃん、今日はなんだか、雰囲気ちゃうね」
「普段は、スカート履かないんですけど。
楽しみだったので、今日はこれにしました」
歩きながら店先のショーウィンドウに映る自分は、川西さんが言う通り、いつもとは違う自分だ。
好きな人のために可愛くいようなんて気持ちは、さて、何年ぶりの感情だろう。
軽くなった心の使い方が、イマイチまだわかんないままで。
補助輪なしで自転車に乗り始めた時のような不安定な気持ちに、自分で自分に振り回されてる。
斜め前を歩いていた川西さんはふわりと笑ってこちらを振り向きながら、続ける。
「(名前〉ちゃんやったら、あんなんもかわいらしくて、似合うんやないかなぁ」
彼が指した指先のマネキンは、夏らしいワンピースを着ていた。
平均より背の低いわたしには合わないように見えるそれは、透き通る空と、同じ色をしていた。
「今度、挑戦してみようかな…」
素直に、生きてみようかな、なんて。
「その時は、一番に見せてな」
楽しそうに笑うあなたに、同じように笑って返した言葉。
次の日に、すぐにそれを買いに行って。
あなたの隣で、これを着たら。
なんて、言ってくれるのかなあって。
おもちゃを買ってもらった子供みたいにワクワクしながら紙袋を抱いて帰った。
その日から毎日壁にかけて、その日を楽しみにしていた。
一番に見てもらう、その日を。
夏にぴったりのワンピースが着られる夏が、
もう終わりに近づいていた。
日曜日、夜空いてますか?
壁にあるそれを見るたびに、夏の終わりを意識した。
勇気を振り絞っておくった、精一杯のメッセージ。
もっと気の利いたことを、
もっと素直な言い方で伝えられたら。
自分に正直に生きられる、かわいい女の子でいたかったけど。
軽くなった心でも。
きっと、私はあなたの隣で、
失うことを怖がってばかりで、始めようとはしないのだ。
会いたいなんて、言えなかった。
繋ぎ止めてしまった瞬間に、わたしの存在がめんどくさいものになってしまう気がして。
お利口さんの、理解のある、かっこいい大人に写っていたかった。
だって。
そうやって、曖昧に距離を残した出会い方を、したのだから。
ぐずぐずしている間に。
これを見せる前に、きっと。
夏は、終わってしまうけれど。
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きゃめ(プロフ) - メイさん» メイさん、こちらこそ最初からずっとコメント応援本当にありがとうございました！予定を何度も覆して大分ラストまで遠回りしましたが、楽しみにして頂けて嬉しかったです。私もこのお話がいつしか日常の一部になっていた部分があってまだ寂しいので続きでも宜しくです！ (2020年9月16日 6時) (
レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - ハンナさん» ハンナさん、ずっと応援して下さって本当にありがとうございました。ずっと励みにしておりました、なので御礼をお伝えしなくてはいけないのは私です。少しでも楽しんで頂けたなら本望です。今はまだ燃え尽きてますがまた頑張りますのでその時は宜しくお願い致します！ (2020年9月16日 6時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
メイ(プロフ) - お疲れ様でした。とてもとてもステキな終わり方で、、余韻がすごいです。ドキドキハラハラするお話で、この先どうなるのかと続きを毎回楽しみにしていました。終わってしまうのが寂しい。2人のその後、ぜひ読みたいです。きゃめさん、ステキなお話ありがとう！ (2020年9月16日 0時) (レス) id: 24f8e2afc7 (このIDを非表示/違反報告)
ハンナ(プロフ) - きゃめさん…なんだか言葉が見つからない…ひとまずお礼を…お疲れ様でした、ありがとうございます 静かな優しい物語に巡り合えたことに感謝です みんなが優しくてちょっと弱くて、でも熱い気持ちがあって……また次回作楽しみにしています (2020年9月15日 23時) (レス) id: 9d1b7de85f (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - みささん» そうだったんですか！好きなお話って書いていただけて嬉しかったです。最後までお付き合い頂けたら嬉しいです◎ありがとうございます。 (2020年9月15日 3時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きゃめ | 作成日時：2020年9月6日 17時
