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「かっこよかった、なぁ…」
ベンチに腰掛けて、ぼんやり思い出す。
ステージに立つ姿は、
何よりキラキラして素敵だった。
そういえば、ここにくるたび、彼らを見るたび、
惰性で日々をこなすようになる自分を、
何かを目指す煌めきに引き戻すだけの力が彼らにはあった。
そういえば、川西さんの相方って信二さんだったな、
なんて。
当たり前だけど結構最近まで知らなかったことを思い出しつつ。
本当は、泣きたいくらいの、きもちだった。
もっと、もっと、
そばにいたかったなあ。
笑いの場所に、涙なんて似合わないから。
今度は必死に、必死に手の甲を抓って我慢した。
会場を出て、
気がつけば、あの日のベンチにいて。
ふわふわ煙が、夜に溶けて、消えていく。
この煙を、
わたしはだれを忘れたくて、
だれを忘れたくなくて、求めているんだろう。
最初に脳裏によぎった面影が、煙の先で本物になる。
わたしを見つめて、離さなくて。
夢なのか、幻なのか、わからなかった。
あの日の夜ごと、幻になって消えちゃったら、
こんなに辛くて、悲しくなんて、ならないのかな。
「A、ちゃん…」
なんで、そんな悲しそうなの。
わたし、あなたの笑った顔が、好きなのに。
「………か、川西…さん、」
「きてくれてたん、やね」
自分の中の気持ちがぐちゃぐちゃになって、
どんどん視界がぼやけていく
「やだな…煙が目に入った、かな…」
「なあ、Aちゃん、それは、なんの涙?」
「え?」
「俺は、いま。
泣きそうなくらい、君に会えたことが、うれしい」
「わ、たし。ずっと、ずっと。
応援してます。
わたしみたく、あなたの存在に前を向けるようになる人、きっと、沢山いるから。」
「え、Aちゃん、それ、どういう…」
「さよ、なら……」
自惚れだ。こんな夜は。
会えて泣きそうなくらい嬉しいのは、
わたしの方なのに。
あなたの、気持ちには。
いまはこたえられない。
堰を切ったように止まらない、
流れる涙だけは、正直だった。
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きゃめ(プロフ) - さゆさん» さゆさんコメントありがとうございます!書いててしんどいんでもっと幸せな話にすればよかったと思いつつ、お声がけいただける言葉でなんとか書いております!どうぞ最後まで見届けてやってください!いつもありがとうございます◎ (2020年8月24日 10時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ - いつも更新お疲れ様です!!ここまでの展開、思いを上手く表現できず何とも言えないもどかしいですね、、きっと良い方向に向かってくれると信じて最後までしっかり見届けたいと思います!更新大変だと思います、無理はなさらないでください( ; ; )応援しております◎ (2020年8月24日 1時) (レス) id: a45b2e5612 (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - メイさん» 泣かせてしまったでしょうか…今日はもう少し続きを更新しましたが、あんまり現状は変わってないですね…ちゃんとお互いの気持ちが通じればいいんですけど。もうすこしまっててあげてください。 (2020年8月23日 19時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
メイ(プロフ) - 泣きそうになりました。ホントに上手くいかないですね、、でもあの場面をみたら誤解しちゃいますよね。誤解だと分かれば良いな。 (2020年8月23日 19時) (レス) id: 24f8e2afc7 (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - メイさん» 上手くいかないですよね…川西さん、気持ち素直に動いてくれたんだけどな…どうぞこの後も見守ってやってください。メイさんいつもありがとうございます。 (2020年8月22日 9時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きゃめ | 作成日時:2020年8月16日 9時