けんしろ1 ページ43
*
割と、うんざりしている。
「水田くん、聞いて」
「またAちゃんやろ」
「ちょ、名前で呼ばんとって!」
(いや、名字知らんしな…)
聞くとは一言も言ってないのに、
昨日作ってくれたメシが美味しかっただの、
朝が弱い自分を何度かに分けて起こしてくれて、コーヒー淹れてくれていってらっしゃいしてくれただの。
まあ所謂、惚気ってやつ。
毎日聞かされる身にもなって欲しい。
そんで、完全にキャラ崩壊してる相方を見続ける俺の身にもなって欲しい。
そりゃあ賢志郎が幸せなのは嬉しいことだから。
あんまりこういうのを外に出さへんこいつがまじで大事にしてるのもわかってるから、強くは言わへんねんけど。
「賢ちゃん、いる?」
入ってきたのは濱家で。
最近結婚して丸くなったというか、大人しくなったというか。
連む女で変わるこいつらは似たもの同士のようにも思う。
「濱くん、どうしたん?」
「いや、今日このあとどうかと思って」
「あー、……すまん。今日は先約」
「え、もしかして賢ちゃん、これ?」
そう言いながら小指を立てる濱家は至極楽しそうだ。
やめとけやめとけ、長くなるぞ。
「まあ……そんなもん、かな」
そもそも、こういうフリをされて、素直に彼女いるなんて言わないタイプの賢志郎が、この返しをしてるのも珍しいことで。
案の定思ってた返しと違ったことにびっくりしたのか、濱家のテンションはさらに上がる。
「へえ!めずらし、賢ちゃんそういうの興味ないか人に言わんかのどっちかやん」
「大切やねん。
いずれはちゃんとみんなにも言うつもりやから。」
「なあ、今日彼女と約束?ほんなら会わせてや!」
「はあ?嫌やって。
水田くんにも会わせてないんよ?」
「え、そーなん?」
びっくりした顔の濱家がこっちを向くから。
とりあえず肯定の意を表すために頷く。
「やってAに会ったら絶対みんな好きになるから、絶対あかん。」
出たよ賢志郎の独占欲。
ほら、濱家びっくりしてるやん。
「いやいや、俺既婚者やで?」
「それでもあかん。」
「ケチやなあ…。
まあええや、ほんならまた誘うわ〜
次は彼女?
えと、Aちゃんやっけ?会わせてなぁ」
「だから!名前で呼ばんとってよ!」
だから。
名字誰にも言ってないやろって。
まあ、こんな日常生活を、かれこれ何ヶ月かしているわけで。
(ゆずる誘ってメシでもいこ…)
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きゃめ(プロフ) - 朱星さん» 好きと言ってくださってありがとうございます!一緒に夏を楽しめるといいなあと思ったので嬉しいです◎いくつか刺さりましたよ!頑張ります!よかったらまたリク飛ばしてください! (2020年9月8日 18時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
朱星 - 夏のお話めっちゃ好き!今年の夏は何もなかった…。妄想補填大賛成!お祭り、花火大会、プール、海、星空、バーゲン、夜景、夏期講習の帰り道。何か変なのもありますが、どれか、きゃめさんにさされー(笑) (2020年9月7日 20時) (レス) id: acf62d2dcf (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - ますみさん» コメントありがとうございます!リアクションがあると書いていてとってもやる気になりますので嬉しいです。貧血のときの朝ってもう最悪じゃないですか…その先にこんくらいイベントあるなら頑張れるかなって妄想にお付き合いくださりありがとうございます◎ (2020年9月6日 10時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ますみ(プロフ) - 今度は川西さんですね。関係性も凄く良かったです。川西さんの優しさもあってちょいツンデレな川西さんにキュンキュンしました。確かにこの時の貧血はやばいですもんね。むっちゃ共感しました。 (2020年9月5日 21時) (レス) id: cc9c552fc9 (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - ますみさん» 自分の気持ち乗せまくって書いたので共感していただけるのとっても嬉しいです。お待ちしております◎ (2020年9月5日 9時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きゃめ | 作成日時:2020年9月4日 21時