4 ページ12
*
「ゆずるさん、なんで…休憩ちがったんじゃ」
朝からなにも食べてなかった体に、あったかいスープが染みる。
少し塩分が強めのおにぎりは、優しい味がした。
「心配で、代わってもらったんよ。大丈夫?」
こんな、都合のいいことが、あるんだろうか。
ゆずるさんが、私のことを。
心配してくれる、なんて。
でもきっと。
優しいゆずるさんは、誰にでもこうやって優しくするんだから。
自惚れちゃ、いけない。
「いまさあ、Aちゃんが考えてること、当ててええ?」
「えっ?」
さっきとはちがう、少し悪戯っ子のような顔で、ゆずるさんは続ける。
「俺が、誰にでもこんなことするって、思ってるやろ?」
「……、だって。ゆずるさん、優しい、から」
「Aちゃん、だけ、やで」
やっぱり。今日は幻覚ばっかりだ。
「嘘や思ってるやろ。
ええよ、もっかい、ほっぺた抓ってみ?」
言われるままに頬を引っ張ってみても、痛いだけ。
「あーあー、やりすぎたら赤なるから。もうやめとき」
ほっぺたを抓ったままの私の両手を掴んだまま。
ずい、と近づけられた、整った綺麗な顔。
「好きな子にしか、こんなこと、せーへんよ」
「へっ、え?」
「食べたら、おいで。」
大きな手が。
ふわりと私の頭に乗せられた、あと。
唇に残った少しカサついた感覚。
「ごちそーさま」
やっぱり悪戯に笑った顔のまま、彼は店先に戻っていった。
ぜんぶ、夢であれ
(大丈夫?)
(へっ?え、あ、はい!)
((赤くなったり青くなったり忙しい子やなあ))
((夢だったのかな…))
(もう一回、思ってること当てようか)
(え?)
(夢ちゃうよ、観念しい)
.
219人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きゃめ(プロフ) - 朱星さん» 好きと言ってくださってありがとうございます!一緒に夏を楽しめるといいなあと思ったので嬉しいです◎いくつか刺さりましたよ!頑張ります!よかったらまたリク飛ばしてください! (2020年9月8日 18時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
朱星 - 夏のお話めっちゃ好き!今年の夏は何もなかった…。妄想補填大賛成!お祭り、花火大会、プール、海、星空、バーゲン、夜景、夏期講習の帰り道。何か変なのもありますが、どれか、きゃめさんにさされー(笑) (2020年9月7日 20時) (レス) id: acf62d2dcf (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - ますみさん» コメントありがとうございます!リアクションがあると書いていてとってもやる気になりますので嬉しいです。貧血のときの朝ってもう最悪じゃないですか…その先にこんくらいイベントあるなら頑張れるかなって妄想にお付き合いくださりありがとうございます◎ (2020年9月6日 10時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ますみ(プロフ) - 今度は川西さんですね。関係性も凄く良かったです。川西さんの優しさもあってちょいツンデレな川西さんにキュンキュンしました。確かにこの時の貧血はやばいですもんね。むっちゃ共感しました。 (2020年9月5日 21時) (レス) id: cc9c552fc9 (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - ますみさん» 自分の気持ち乗せまくって書いたので共感していただけるのとっても嬉しいです。お待ちしております◎ (2020年9月5日 9時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きゃめ | 作成日時:2020年9月4日 21時