3 ページ11
*
「ゆずるさん、おつかれさまです」
いつものように挨拶をしてくれたのはバイトのAちゃん。
いつもは入りより早く来るのに今日はギリギリで、いつもより心なしか声にも元気がない。
どうしたもんかと作業を止めて顔を見れば、びっくりするくらい真っ青だった。
中途半端に仕事をするタイプの子ではないのは知っているし、きっと笑顔で取り繕ってるあたり、頑張りたいと思ってるのだろう。
なら、ここで帰ることを促すのも野暮なのかと、心配になりながらも止めることはしなかった。
まあ今日は平日やし、フォローしながら働こうと心にだけ決めて。
しかし、予想に反して忙しい店内、
どうやらアドレナリンだけで動いている彼女は、いつも通りの笑顔で接客しているものの。
ちらりと見るたびに、壁や手すりに手をついたり、一瞬しんどそうに顔を歪めていて。
さすがにドリンク持ってふらついたのをみたときはヒヤヒヤした。
休憩に入るときには、目も当てられないような顔で引っ込んでいったのが見えて。
「大塚さん、すみません。次の休憩、代わってもらってもいいですか?
代わりに長く取ってもらっていいんで。」
無理に彼女と同じタイミングで休憩に入る予定だった大塚さんにシフトを代わってもらって。
急いで食べれそうなご飯を作ってバックヤードに向かえば。
Aちゃんが真っ青な顔でソファーに倒れ込むその瞬間だった。
急いで駆け寄ったせいで、彼女との距離はほぼない。
ぼんやりした顔と、トロンとした目は、どこかいつもより大人っぽくみえた。
邪に傾いた思考を振り払いながら、作ったご飯を勧める。
食べ始めるのかと思えば焦り出したり、自分の頬を抓っていたいと喚く姿は忙しなくて、
先程の艶めきはない。
だけど。
やっぱりまだふらふらしている最中に手を回しながら、無意識にこちらに寄りかかっている少し熱い体に思考はそれどころではなくて。
掌から伝わってきた心なしか高い体温が、自分のそれではないと、一生懸命言い聞かせていた。
.
219人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きゃめ(プロフ) - 朱星さん» 好きと言ってくださってありがとうございます!一緒に夏を楽しめるといいなあと思ったので嬉しいです◎いくつか刺さりましたよ!頑張ります!よかったらまたリク飛ばしてください! (2020年9月8日 18時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
朱星 - 夏のお話めっちゃ好き!今年の夏は何もなかった…。妄想補填大賛成!お祭り、花火大会、プール、海、星空、バーゲン、夜景、夏期講習の帰り道。何か変なのもありますが、どれか、きゃめさんにさされー(笑) (2020年9月7日 20時) (レス) id: acf62d2dcf (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - ますみさん» コメントありがとうございます!リアクションがあると書いていてとってもやる気になりますので嬉しいです。貧血のときの朝ってもう最悪じゃないですか…その先にこんくらいイベントあるなら頑張れるかなって妄想にお付き合いくださりありがとうございます◎ (2020年9月6日 10時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ますみ(プロフ) - 今度は川西さんですね。関係性も凄く良かったです。川西さんの優しさもあってちょいツンデレな川西さんにキュンキュンしました。確かにこの時の貧血はやばいですもんね。むっちゃ共感しました。 (2020年9月5日 21時) (レス) id: cc9c552fc9 (このIDを非表示/違反報告)
きゃめ(プロフ) - ますみさん» 自分の気持ち乗せまくって書いたので共感していただけるのとっても嬉しいです。お待ちしております◎ (2020年9月5日 9時) (レス) id: e2386f9ce6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きゃめ | 作成日時:2020年9月4日 21時