211・ ページ11
ーAsideー
「Aちゃん？大丈夫？」
『あ、うん！行こっか』
ウタさんに顔を見られないように先に進む。
床は手入れされていないようで、古くなった木が軋むのがわかる。
『私の部屋見る？』
「見てみたい」
心なしかウキウキしているウタさんの声色。
記憶を頼りに広い室内を歩く。
確か私の部屋は、階段を上がって右手に曲がった一番奥の部屋。
ノブを回すと暗闇が広がる。
懐中電灯で中を照らすと、あの頃の私の部屋がそのまま残されていた。
『誰だろう』
普通だったら埃をかぶっている棚も、おもちゃも、なにもかも綺麗なままだ。
「頻繁にここにきてるのかな。それとも今日僕らがここに来るのがわかってたのかな」
『まさか。だって今日ここに行くって決めたのはついさっきじゃん』
「…確かに」
部屋の中を探索しているといきなりドアが閉まる。
『え？ウタさん…？』
ウタさんは首を横に振る。
『……風？』
「どうだろう」
そこは「うん」って言って欲しかった。
『ウタさんは幽霊とか信じるタイプ？』
「信じてはないけど、本当にいたら面白そうだなって思う」
『面白そうって…』
「Aちゃんは？信じてる？」
『うーん、いるとは……思うよ』
「考え方ってたくさんあるから面白いよね」
バカにしないで、１つの考えとして受け入れてくれるところが大人だ。
業だったら絶対笑うな。
『あ、そうだ』
確か机の引き出しに。
「何か思い出したの？」
『うん。ここに鍵が入っててね、日記の鍵なんだけど』
引き出しを漁っていると懐中電灯の光が途切れてくる。
『うそ！このタイミングで！？』
数秒も経たないうちにプツリと電気が切れてしまった。
『暗っ！！』
「僕ライター持ってる」
『なんで！？まあいいや。とりあえず照らしてくださるとありがたい』
「わかった」
ウタさんはライターをシュボっとつけ、私の手元を照らしてくれた。
『あ！あった！！』
金属製の鍵も錆びついておらず、特有の光沢が見られた。
「日記はどこにあるの？」
『お父さんとお母さんの部屋』
「Aちゃんの日記じゃないんだ」
『私の日記だよ。でもお母さんに奪われちゃった』
「奪われたの？」
『うん。「日記なんて書かないで。書くくらいなら私たちに話してくれればいい」って言われて』
今思えばこれってすごく変だ。日記くらい書いたっていいじゃない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 222人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mh - いつもクオリティの高いお話をありがとうございます！応援しています‼ (2022年2月23日 1時) (
レス) id: 6608c57345 (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - ミライアルさん» ありがとうございます！更新ペース上げられるよう頑張りますね！！ (2019年4月20日 19時) (レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
ミライアル(プロフ) - うぉー！なんか続きがめっちゃくちゃ楽しみっす！更新頑張ってください！応援してます！ (2019年4月20日 13時) (レス) id: b0af308e1c (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - 名倉さん» ありがとうございます！！よかったです！倒れない程度に頑張ります！！ (2019年4月3日 1時) (レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
名倉 - 第5弾おめでとうございます！ すごく面白かったです（＾_＾） 更新、無理しない程度に頑張ってください！ (2019年4月2日 23時) (レス) id: 4b077ed0aa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：eye | 作成日時：2019年3月24日 23時
