181:雛鳥 ページ31
ーAsideー
無事着替えが終わり教室に戻ると、渚がカバンを持って私の席の前で立っている。
『渚、私に用？』
「うん。今日あんていく行こうかなって思ってるんだけど、一緒にどうかなって」
『あ、ほんと？ちょっと待ってて。急いで支度する』
スクールバックに体操着や教科書を詰めていると、スマホが振動しているのに気づいた。
［お姉ちゃん］
『もしも「〈雛実が！！雛実がいなくなった！！！〉」……え？』
頭が真っ白になり、体から力が抜ける。
なんで？だって雛実は……あんていくに。
「わっ！？スマホ落ちた……よ」
渚の声が右から左に抜けていく。
「どうかしましたか東雲さん」
目の前に広がる黄色。薬品の匂い。
『！？』
私はスクールバックの底からマスクを引っ張り出す。
せっかくしまった体操着が出てしまったがこの際どうでもよかった。
目の前にタコ先生がいるのもどうでもよくて、喰種だとバレてもしょうがないし悔いもない。
雛実を一刻も早く見つけ出さないと。手遅れになる前に。
『渚。私あんていく行けない』
「うん。わかった」
渚は物分かりがいい。「どうして」、「なんで」とむやみやたらに聞いてこないあたり大人だなといつも思う。
『ありがとう』
私はスマホをスカートのポケットにしまい、体育時に履く靴を持って窓から飛び出した。
転びそうになりながら内履きを脱ぎ捨て、外履きに履き替える。
それからは無我夢中で走った。人目に着くと困るので、山の中を走って移動する。
ああ雛実。どうか無事でいて。
ー
雛実は必要以上に外出はさせてもらえていなかったはず。
外出するときはリョーコさんと。つまり雛実自身に土地勘はあまりない。
ということは、あまり遠くに行っていないはず。
あんていく付近からかすかに残る雛実の匂いを辿る。
近くに２つ知っている匂い。お姉ちゃんと金木さん。
私は2人を待たなかった。待っている間に雛実に何かあったら。
緊張と焦りで足がもつれて盛大に転ぶ。
近くにいた人間のカップルがクスリと私を笑った。
ー
重原小の近くまで来ると、昔何度か嗅いだことのある匂いがした。それに混ざって雛実の匂い。
『雛実…？』
橋の下で膝を抱えて泣いている少女。間違いなく雛実だ。とりあえず無事を確認できたことに安堵する。私は駆け寄り、雛実の近くにしゃがんだ。
『雛実。帰ろう』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 201人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「暗殺教室」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
eye(プロフ) - よつぎさん» ありがとうございます！ウタさんいいですよね！！頑張ります！ (2019年3月24日 0時) (
レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
よつぎ(プロフ) - とっても面白いです！！私ウタさん大好きなので本当にはまっちゃいました！これからも更新楽しみに待っています！！頑張って下さい！！ (2019年3月23日 21時) (レス) id: 1767016ec7 (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - みっこさん» ああありがとうございます！！！嬉しい限りです！戦闘シーンってどう書いたらいいのかわからず毎回更新詰まってます…。申し訳ないです！できる限り頑張って更新しますのでお待ちくださると嬉しいです！！ (2019年3月22日 1時) (レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
みっこ - この小説気に入っていて何時も見直して更新楽しみにしています！少しずつ更新頑張って下さい！ (2019年3月21日 22時) (レス) id: f38aff3a8c (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - 東條うたさん» ありがとうございます！すっごく嬉しいです！！そうですね！健康第一(？)なので無理しすぎない程度で頑張っていけたらなと思います！ (2019年3月13日 14時) (レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：eye | 作成日時：2019年2月22日 0時
