161:母と子 ページ11
ーAsideー
だんだんと濃くなってくる匂い。もうすぐだ。すぐそこに雛実がいる。でもリョーコさんの匂いはしない。
『はぁ、はっ、はっ』
私は彷徨っている雛実を見つけた。そのまま拾い上げるように抱え込み、路地裏へと連れ込む。
「ひっぐ、Aおねえぢゃん!!おねえちゃん!!」
『雛実、よかった』
雛実の顔は雨と涙とでぐちゃぐちゃになっている。
『リョーコさんは?』
「お母さん、お母さんが!!」
『…行こう』
私は雛実の手を握る。
小刻みに震えた手を包み込む。
「大丈夫」という言葉を言いかけて飲み込む。
大丈夫だなんて保証はどこにもない。
嘘はつけない。私は黙って走った。
路地裏を抜けると、リョーコさんが跪いている。だめ、だめだめ。そのヒトは……!!!
急に後ろに引っ張られ尻餅をつく。立ち上がろうとした瞬間 リョーコさんの首が高く飛んだ。
ー
私は後ろを振り返り、私の手を握っているやつをぶん殴る。
金木さんだった。
『どうして止めたの!?なんで、まだ間に合ったのに!!』
金木さんは真剣な顔をして私を見ていた。
『私ならリョーコさんを』
「今はここを離れよう」
金木さんは雛実の肩を抱き、雛実を隠すようにあんていくへ向かう。
取り残された私は、リョーコさんがいた場所をそっと撫で、金木さんを追いかけた。
ー
あんていくに戻ると芳村さんが何かを察したように、すぐに雛実を匿ってくれた。
私に雛実を部屋へ連れていくように言った。
『おいで雛実』
雛実は黙ってついてくる。
私も雛実もびしょ濡れで、ひとまず体を温めなければ風邪を引いてしまう。
『お風呂入ろう』
お風呂を沸かしている間、雛実は俯いて微動だにしない。
私は雛実をそっと抱きしめる。
ピクリと反応した雛実。すぐに私に身を預けるように寄りかかってきた。
「Aおねえちゃんっ、私、わたし、1人になっちゃったの…?」
『………雛実は1人じゃない。私がずっと、一緒にいる』
少しかがみ、雛実と目を合わせる。
こすったせいで少し赤くなった目は、涙でいっぱいになっていた。
『雛実』
雛実の名前を呼び頰を擦ってやると、栓が抜けたように涙が溢れ出してくる。
「うわぁぁああぁぁあああ!!!!」
無機質な声が、お風呂に入れと私を急かす。
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eye(プロフ) - よつぎさん» ありがとうございます!ウタさんいいですよね!!頑張ります! (2019年3月24日 0時) (レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
よつぎ(プロフ) - とっても面白いです!!私ウタさん大好きなので本当にはまっちゃいました!これからも更新楽しみに待っています!!頑張って下さい!! (2019年3月23日 21時) (レス) id: 1767016ec7 (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - みっこさん» ああありがとうございます!!!嬉しい限りです!戦闘シーンってどう書いたらいいのかわからず毎回更新詰まってます…。申し訳ないです!できる限り頑張って更新しますのでお待ちくださると嬉しいです!! (2019年3月22日 1時) (レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
みっこ - この小説気に入っていて何時も見直して更新楽しみにしています!少しずつ更新頑張って下さい! (2019年3月21日 22時) (レス) id: f38aff3a8c (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - 東條うたさん» ありがとうございます!すっごく嬉しいです!!そうですね!健康第一(?)なので無理しすぎない程度で頑張っていけたらなと思います! (2019年3月13日 14時) (レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:eye | 作成日時:2019年2月22日 0時