1:夜空 ページ1
ーno sideー
古い校舎に少女が一人、床の軋む音を楽しみながら廊下を歩く。
誰もいない教室は不気味なほどに静かだが、月明かりに照らされることにより どこか神秘的でもあった。
少女は教室らしき部屋に入ると窓を全開にし、空を見上げる。
星が一面に散らばっていた。
『明日は晴れ…？』
返事が返ってこないのを知っていながらどこかの誰かに問いかける。
少女はふらっと回れ右をすると窓を開けたまま教室を後にした。
ー
ーAsideー
学校に何をしに行ったのかさえも忘れ、”あんていく”に戻ってきてしまった。
〈close〉になっているプレートを見て、嗚呼もうそんな時間なのかと確信する。
裏口から入ると中で金木さんが珈琲を淹れる練習をしていた。
『ただいま』
「おかえりA」
『ねぇ、金木さん』
「なに？」
『その珈琲あとで頂戴』
「いいよ。美味しくないと思うけど」
そう言って金木さんは頬をかいた。
金木さんはあんていくで働いている喰種の一人。
不運な事故にあったせいで喰種になってしまったらしい。
つまり、元は人間であった。
何があったのか聞いてみたかったが、それが彼の傷をえぐるようなことになってしまっては大変なのでやめた。
「はい」
目の前に置かれたコーヒーカップからは湯気が立っていて、香りがより豊かに感じられる気がした。
『ありがとう』
熱い珈琲を少しずつゆっくり口に運ぶと、口の中全体に旨味が広がる。
『ん、美味しいよ』
「ほんと！？よかった」
胸をなでおろす金木さんを微笑しながら眺める。
彼は常に左目に眼帯をつけている。
どうやら眼帯をしている左目は空腹状態になると自分の意思と関係なく赫眼になってしまうらしい。
喰種の体になってから間もない彼に、そういった操作は難しいのだろうか。
「そういえばA、学校に何しに行ったの？」
『えっ、と。下見？みたいな…？』
「下見？…そうなんだ。どうだった？」
『そうだねぇ。とりあえず古くて、古くて、あと、あ！星が綺麗だった！』
「それ学校関係ないよね！？」
『…たしかに。じゃあ学校を下見に行った感想は、古い！以上！！』
「…雑」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 355人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
eye(プロフ) - 悠李さん» ご指摘ありがとうございます！気づきませんでした…！訂正します！ (2019年8月4日 19時) (
レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
悠李 - すいません、11ページの「一部始終」というのは全てみていたと言う意味になるので正しくは「一部」だと思います…！ (2019年8月4日 18時) (レス) id: 9118a43d0b (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - うにゅ( 'ω' )さん» えぇありがとうございます！！そう言っていただけて嬉しいです！！ (2019年3月25日 15時) (レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
うにゅ( 'ω' )(プロフ) - eyeさん» うわ考えられてる！！！尊敬！！！ (2019年3月25日 13時) (レス) id: aa182fc6be (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - うにゅ( 'ω' )さん» トーカちゃんはラビットです！ラビットって書いたらバレるかな…と思ってカタカナで「ウサギ」にしてみました！ (2019年3月21日 12時) (レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：eye | 作成日時：2018年4月11日 1時
