2章 13話 “僕” ページ2
そうして遠ざかっていく背を眺めながら、私は安堵のため息をつく。
「良かった…」
だいぶ大雑把にキルアと距離を取ってしまったが、しょうがなかったとしか言えない。
なぜなら、先程見えた人物。キルアと並んで走っていたときに見えたからだ、ツンツン頭の少年が。
きっとアレは、ゴンだった。
緑がかった黒髪も、ぴんと伸びた背筋も、少し垣間見えただけだけど爛々と光る瞳も。
全てが私の記憶と一致するものだ。
あのままキルアと走っていたら、きっと1分後には彼を抜かしていたと思う。そのとき会話したのか、しないのかは分からないが、それでもキルアとゴンの初対面だったことは間違いないだろう。
そんな場面に、異物の自分が混ざっていいとは思えなかった。
自分を卑下して言っているのではなく、これは異世界人としての言葉。
彼らの世界では、彼らはやはり自身の物語を生きていて。
だからこそ私を助けてくれた2人がいるのだと思う。そして、あの2人の濁ることを知らない友情も。
そう思うと、彼らの初対面に私が居合わせてはいけないような気がしたのだ。
これから2人と関わりを持とうとしている自分が、何を言っているのかと思うが。
……それと、本当は。
本当の、もう1つの自分の正直なとことしては。
__ゴンにまで、『誰？』と言われるのが、怖かった。
事実としては、もう分かっているけど。キルアの言葉で十分傷付いた筈なのだけども。
それでも、まだ心の準備が欲しかった。
私の中にしか、今はもう無い在りし日の記憶__。
『Aの友達になる男だよ！』
そう屈託のない瞳で見てくれたことを。
ほんとのほんとに、私だけが覚えてる。それがほんとに現実なのだと思い知らされる。
靴紐を結ぶ指が、視界が滲んで良く見えなくなりそうだ。
必死に、紐をくくる。
まるで自分の感情の落とし所を見つけるように。
繋ぎ止めるように。
…もう、ほどけないように。
涙は出なかった。
今出すべきでないと分かっていたから。
元来の女優としての在り方が、私にそうさせた。
「ん、大丈夫」
結び直した靴を再度見て、立ち上がる。
私はもう、大丈夫。
2人に名前を聞かれても、まだ友達と思われていなくても。
この1年の私の頑張りは、そう簡単に2人を諦めさせてはくれない。
「……たとえ覚えていなくても」
口の中で、舌の上で転がすように言葉を続ける。
「私は2人を覚えてる」
「ううん、__僕が2人を覚えてる」
__だからもう在り方は迷わない。
そう強く思った。
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h16ayakaアヤッカー(プロフ) - むぎちゃさん» ありがとうございます！この先のネタがしっかり固まったらまた更新を再開させていただきます！むぎちゃさんのような感想にいつも癒されてますー(*^^*)気分転換にでも読んで下さると幸いです。 (4月13日 13時) (
レス) id: fc0f964cc9 (このIDを非表示/違反報告)
むぎちゃ(プロフ) - とても面白かったので一気見しちゃいました（笑）良ければですが 、続きが見たいです！もちろん無理は良くないんですけど、いつか更新されるのを楽しみにしています！ (4月8日 1時) (レス) @page7 id: cc2beb923e (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - h16ayakaアヤッカーさん» ✉️。はい！遅くなる可能性もありますが宜しくお願いします！🌟、アヤッカーさん！ (11月24日 21時) (レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
h16ayakaアヤッカー(プロフ) - マニ。さん» ありがとうございます！マニ。さん！これからもよろしくです！ (11月24日 21時) (レス) @page6 id: fc0f964cc9 (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - h16ayakaアヤッカーさん» ✉️。いえいえ！無理せずに休むのも大事です！これからも無理せず応援してます！アヤッカーさん！💝 (11月22日 20時) (レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アヤッカー | 作成日時：2023年11月21日 16時
