38話 幼女伝記#終 ページ42
「…さぁ、早く病室に戻りましょう。入院費は私が払いましたから…。」
未だ顔を上げることが出来ない私に声をかけ、手を差し伸べてくれる医院長。
「………ありがとうございます。」
この人、優しかったんだ…。
最初の頃、私から目を逸らしていたのはお爺ちゃんの事を気の毒に思ったからだろう。
久しぶりに優しさというモノに触れた気がしてさっきまでの消失感が少しだけ軽くなる。
お爺ちゃんの穏やかな笑顔と似ている微笑みを医院長が浮かべていて、目頭が熱くなってくる…が必死に耐えた。
目の前に差し出された手を握ろうと、自分の右手を伸ばす─────────が、
「ぇ……」
それは叶わなかった。
何故か、、、それは………
私の手が、医院長の手を握ろうとした瞬間、尋常ではない汗の量と震えが発生してしまったからだ───。
「なん、で…」
初めは右手だけだった振動が、徐々に体全体にも広がってくる。
不快感を感じる"コレ”は一体何なのか───?
けれど、1つだけ考えられる事があった。
「まさか、私……」
1ヶ月前のあの出来事が頭の中で再生される。
そう、あの時感じた恐怖心がこの現象を引き起こしているのだとすると────。
私は────
『………男性恐怖症。』
「───どうしたんだい?」
私の様子がおかしい事に気づき、近付いてくる医院長、、、
貴方は優しい。優しいけれど、、、ごめんなさい。
彼の手が私の肩に触れようとした時…。
「さ、触らないでっっ!!!」
言ってから、ハッと気づく。
今、私が言ってしまった言葉の最低さを…。
───醜さを。
「…ごめんなさい、1人で大丈夫です。」
そう小さく呟き、松葉杖を起こして廊下の通路に出た。
1度も、医院長の顔を見ずに。
だって、合わせる顔が無い。
恩を仇で返した私に、何の資格も無い。
そう思うと、もう、、、
1人で居たくなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
大切な人さえ守れなかった。
自分のせいで殺してしまった。
死んでしまった。
そんな私に手を差し伸べてくれた人の手さえ、私は叩いてしまった。。。
そう思うと、もう………。
こんな"世界”はどうでもよく思えてきて、、、
──私が飛び降りを考えつくまでに、それほど時間はかからなかった。
そしてココから始まる。再生される。
私とキミ達との歯車が音を立てて回り出す。
〜幼女伝記終〜
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マニ。(プロフ) - h16ayakaアヤッカーさん» ✉️。はい!これからも無理せずに頑張ってください!🌟、応援しまくります!💝 (11月23日 10時) (レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
h16ayakaアヤッカー(プロフ) - マニ。さん» そう言って頂けれると嬉しいですです!!こちらこそボードでもよろしくです! (11月22日 20時) (レス) id: fc0f964cc9 (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - h16ayakaアヤッカーさん» ✉️。いえいえ!本当に最高の作品なのでこれからも無理せずに更新してほしいです!ボードの返事とかも遅めでもいいので仲良くしていきましょう!アヤッカーさん! (11月22日 16時) (レス) @page1 id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
h16ayakaアヤッカー(プロフ) - マニ。さん» マニ。さん!昨日と今日とコメントありがとうございます!面白いと言って頂けるだけで凄く励みになります!ボードの方も何から何まで…感謝。。また更新したら立ち寄って下さると幸いです! (11月22日 16時) (レス) id: fc0f964cc9 (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - h16ayakaアヤッカーさん» ✉️。最初から読み直しました!やはり面白いです!あのアヤッカーさんボードの方に返事送ったので通知来てると思いますのでこれからも頑張ってください!🌟 (11月22日 15時) (レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アヤッカー | 作成日時:2019年1月6日 0時