鬼の少女と文豪たち

人生万事塞翁が虎一其ノ拾伍 ページ16

太宰side

静まり返った倉庫に同僚の声が響く。


太宰「ああ、遅かったね国木田君。

虎は捕らえたよ」



A「...突っ込みませんからね。」


Aちゃんの方を向き、微笑もうとしたが、彼女は敦君に膝枕をしているのが目に入る





太宰「!!!???」


膝枕!!!???


ぐぬぬ...敦君...彼女から飴を貰ってその上膝枕!?



Aちゃんは目を見開いて停止している私を見て


A「?」


と首を傾げた。


ん"ん"ん"ん"(悶え)





国木田「!...その小僧...」


駆け寄ってきた国木田君は気絶している敦君を見て驚いている。



国木田「じゃあ、そいつが」

太宰「うん。虎に変身する異能力者だ。変身している間の記憶がなかったんだね」



国木田君は溜息をつき、後頭部を搔いた。


国木田「全く───なんだこれは」


と言って見せてきたのは私が社長にと渡したメモだ


太宰「"十五番街の西倉庫に虎が出る 逃げられぬように周囲を固めろ" 実に簡潔で佳いメモだ」


国木田「次からは事前に説明しろ。肝が冷えたぞ。

おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。後で皆に酒でも奢れ」


倉庫の入れ口から入ってきた3人の影


1人は肩上で切りそろえられた黒髪の女性。蝶の髪飾りを身につけている

「なンだ 怪我人は無しかい?つまんないねェ」

与謝野晶子 ───能力名【君死給勿】



もう1人は探偵のような服を着た糸目の男性。

「はっはっは 中々できるようになったじゃないか太宰。僕には及ばないけどね！」

江戸川乱歩───能力名【超推理】



そしてもう1人は、使い古したオーバーホールに麦わら帽子を首にかけている男の子。

「でも、この人どうするんです?自覚はなかったわけでしょ？」

宮沢賢治───能力名【雨ニモマケズ】



国木田「どうする太宰?一応 区の災害指定猛獣だぞ」

国木田独歩───能力名【独歩吟客】



太宰「うふふ、実はもう決めてある」

太宰治───能力名【人間失格】



A「どうしよ..また嫌な予感がする...」

道尾A───能力名【鬼の跫音】



私はチラッと敦君を見る。


──こんな奴が何処で野垂れ死んだって...いや、いっそ食われて死んだ方が──


太宰「うちの社員にする」

賢治「おお!」

与謝野「何それ」

江戸川「やっぱり馬鹿だな、太宰は」

国木田「はあああああ!?」







怪奇犇めくこの街の


変人揃いの探偵社


これより始まる怪奇譚



之が先触れ─────前兆し

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