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誰かの隣で、その人に包まれて眠る心地よさを感じるのは初めてに近い感覚ですごくよく眠れた。
でもすぐ目の前で寝ていたはずの慎太郎くんの姿はなかったから寂しさを感じて目が覚めた。
ベッドから起き上がり昨夜とは景色が違って見える部屋を見渡してみた。
漫画が雑に立てかけてある本棚、かと思えば脱いだパーカーなんかは綺麗に畳まれて置いてあるし、カバンも揃えて置いてある。
なんとも慎太郎くんらしい部屋だけど、アクセサリーがまとめてある場所は、ネックレスが絡まっているのが見えた。
私の胸あたりまで高さのありそうな棚の上、ぐしゃぐしゃになったネックレスたちの塊をほどいてみようと試みたくて、私はベッドから立ち上がった。
そしたらこれまで死角になっていたベッドと壁の隙間に、隠すように床に置いてある封筒が妙に気になりしゃがんで覗いてみる。
『これ………』
手元に取ったその時、覚えのある香りが鼻を抜けた。
間違いない。これは………
開封して中身を確認した私は急いで部屋を出た。
「あ、おはようAちゃん」
『これどういうこと慎太郎くん』
階段を駆け降りて部屋に入ると、朝食を用意していたらしい慎太郎くんはキッチンにいた。
勢いのまま慎太郎くんに詰め寄れば、冷蔵庫に体を預けて目を開いて私が持っている封筒を見る。
『これ、結城からもらったんでしょ？』
「それは……」
『慎太郎くん、結城からお金もらってたんだね』
「待ってAちゃん、落ち着いて」
『いくらもらったの、なんで受け取ったの』
「待ってって、ほんとに落ち着いてよ」
慎太郎くんに両肩を持たれ、そのまま優しく押されてリビングのソファに座らされた。
私が持っていたその封筒もさりげなく抜き取られていて、私の視界に入らない慎太郎くんの背中へと隠された。
「びっくりさせてごめんね、でも違うんだよ」
『違うってなにが……』
「確かに結城さんからだよ。
もらったというか、押し付けられたというか………」
私の肩からそのまま腕を伝い、両手を包まれる。
「ずいぶん前に、これあげるからAちゃんのこと忘れろって。
もちろん使わないけど捨てる訳にもいかなくてさ……
とりあえず隠した。嫌な思いさせてごめん」
『うん……』
まるで小さな子をあやすようにトントンと温かい声リズムを刻む慎太郎くんの手が心地よい。
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作者名：なぽりたん
| 作成日時：2023年3月16日 21時
