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“結城へ”
綺麗な字でそう書かれた封筒を優しく丁寧に開ける。
中には、3枚にも渡る手紙が入っていた。
"結城へ
この手紙を見つけてくれてありがとう。
さすが結城だね。
時間はたぶん夕食前でしょ？
いつも呼びにきてくれてありがとね。
突然いなくなってごめんなさい。
私は今、慎太郎くんのお家にいます。
しばらく、お世話になるつもりです。
絶対に、お父様とお母様には言わないで。
私はもうこんな生活は嫌なの。
自由に遊んで、自由に恋愛して、自由に生きたい。
最初で最後の反抗くらいさせてください。
結城にも迷惑をかけることになります。
お父様に怒られると思う。ごめんね。
結城には、とても感謝してます。
お父様にもお母様にも愛されなかった私を救ってくれたのは、結城です。
結城が、私のお父さんであり、お母さんです。
結城、今まで育ててくれてありがとう。
いつか、ちゃんと結城に恩返しするから。
これからはもっと、自分のために生きてね。"
ここから先は、視界が滲んで読み進めることができなかった。
A様、
あなたは私の生きがいでした。
あなたのためなら、なんだってできた。
あなたが生きたいように生きられるのなら、
旦那様に怒られることなど、怖くありませんよ。
ご立派になられましたね。
寂しいものです。
どうか、私のことだけは忘れないでくださいね。
私にだけ、真実を明かしていただきありがとうございます。
どうか、お元気で。
最後に封筒から見つけた、2枚の写真。
1枚目は、生まれたばかりのA様とまだ若々しい自分。
そして2枚目は、つい今日、急に撮ろうと言われて撮った、高校の制服に身を包んだA様と少ししわの増えた自分。
お幸せに。
写真の上に、涙が一粒こぼれ落ちた。
父「Aは？」
結城「…お休みになられていたので、後ほどお呼びします」
父「休んでいる暇などないだろう。嫁入り前だというのに…」
申し訳ありません、旦那様。
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作者名：なぽりたん
| 作成日時：2023年3月16日 21時
