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「Aちゃん、……逃げよう、俺と」
「うん………おいで、俺ん家」
慎太郎くんのその発言に刹那、思考は停止した。
そんなことしたら、私は………
でも、このままここにいても、私は………
言いなりになんてなったら、それこそ慎太郎くんとは一生会えなくなる。
………こんな家、どうせいたくなかったお家だ。
『………行く、慎太郎くんのところ』
こんな家、抜け出してやる。
私は慎太郎くんと一緒になりたい。
「荷物、すぐにまとめておいて。
きっと取りに戻るなんてできないから、最低限必要なものだけ。
決行は今日の夜。
手順はそれまでに考えておくから、Aちゃんは敷地から抜け出す方法を考えておいて。
いい？」
『わ、かった、』
慎太郎くんとの電話ん切り、急いで旅行用バッグを取り出して必要な物を詰めていく。
スマホの充電器に、服、下着、メイク道具、生理用品……
……最低限か、
学校の教科書？いらない。
制服？いらない。
家族写真…………いらない。
あとは………慎太郎くんからもらったネックレスとイヤリングだ、
絶対に持って行かなきゃ。
あとは誕生日に結城からもらったボールペン。これも私に必要。
…………それくらいかな。
詰め込んでも詰め込んでも相変わらずスカスカな鞄は、これまでの私の人生のスカスカさを表しているようだった。
でも、これで十分だ。
私の人生は、これから満たされていくんだから。
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作者名：なぽりたん
| 作成日時：2023年3月16日 21時
