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目の前が、急に、真っ暗になった。
まだ朝だというのに、体がドンと重くなった。
「お見合い、………？、って…どんなやつと、」
『幼馴染みんだけど、もうほぼ結婚決まってて…』
「なに、それ…」
『私、全然何も教えてもらえてなくて…今、突然言われて…』
スマホ越しに聞こえるAちゃんの声が震えてる。
きっと、泣いてる。
やだよ、そんなの。
Aちゃんを悲しませるもの、全て許さない。
「…………いつなの、お見合い」
『明後日、』
「……じゃあ、明日、なら間に合うか…」
『……慎太郎くん、…？』
普段は大して使い物にならない脳みそをフル回転させて。
あぁして、こうして。
人間ってすごい、よくできてる。
自分が本気なものに対しては、こんなに頭が冴えるのだから。
「Aちゃん、……逃げよう、俺と」
『逃げ……それ、って……』
「うん………おいで、俺ん家」
高校2年生。
まさか、そんな壮大な物語を始めるなんてついこの前まで考えもしなかったよ。
ふつーに起きてサーフィンして、ふつーに学校行って、遊びに行って。
ふつーの人生を送るものだと思ってた。
だけどね、本気になれるものに出会って、本気になって、自分の頭で考えて自分の欲に素直になって。
まだ大人じゃない、全然子供だけど、こうやって生きたいんだって、この人と生きていきたいんだって、そんな理想があってもいいだろ。
Aちゃん、助けてあげるからね。
窮屈な檻の扉を、俺が開けてあげるからね。
俺が自由にさせてあげるから。
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作者名：なぽりたん
| 作成日時：2023年3月16日 21時
