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『ごめんね松村』
松村「………いえ、」
松村は突然走り出した私を追いかけることなんてせず、車の側で待っていてくれていた。
そしてとぼとぼと歩いてきた私のためにドアを開けてくれて。
松村「さぁ、乗ってください」
『……うん、』
大人しく頷いた私に優しく微笑んでくれる。
ほんと、いつも迷惑かけてごめんね。
きっと紅潮しているであろう私の頬にも、気づいてない振りをしてくれて。
ありがとう。いつからこんな逞しくなったのやら。
松村「あー、今日は少し暑いですが…
冷房をつける程ではないでしょうか、
窓、少し開けさせていただきますね」
『いいけど……』
なんだかわざとらしくそう言った松村。
言った通りに窓が開けられて、そのまま車は出発する。
そしてさっきまで私と慎太郎くんがいた曲がり角に差し掛かる。
思わず覗き込んだ。
そこには慎太郎くんがまだいた。
目と目が合う。
ガラス越しだったその目。スモーク越しだった目。
さっきまであんなに近くにいたのに。
もう、また、触れたい。
唇が、熱くなる。
.
.
もしも、自由になれたら。
空っぽなこの心が満たされるまで、溢れるくらいにまで、あなたでいっぱいになりたい。
誰にも邪魔されないでその瞳だけを見ていたいし、その瞳に映るものは私だけでいてほしい。
そんな世界が、
あったらいいのにね。
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作者名：なぽりたん
| 作成日時：2023年3月16日 21時
