あなたが見る世界を知りたい (ページ26)

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『……え？松村が？』

結城「はい……ご不満でしょうか？」

『っあ、ううん、全然大丈夫』

朝食の時。結城が切り出してきた話は、ピアノ教室の送迎担当を結城から松村に変更したいということだった。

結城「昔は結城でないと嫌だと駄々をこねられていましたが…

成長というのは時に寂しいものですね」

『もうそんなわがまま言う歳じゃないよ』

結城「承知しております。私の方が子供でしたね」

『おじさんが何言ってんの………でも、どうして松村に？』

聞けば、結城はお父様の関係で新しい仕事が増えたらしく、そっちに時間を取られてしまうかららしい。

後任に松村を指名した理由は、新人だからって。色々仕事を任せていかなきゃいけないからって。

『お父様、忙しそうね』

結城「大事な時ですからね」

『ふーん………』

結城「A様も、いろんなお勉強していかないといけませんよ」

『やだぁ……』

パクっと一口頬張る私を見て、結城がふふっと笑った。

結城「A様も、もう16歳になられましたからね。

いい加減トマトも食べていただかないと」

何か運んできたと想ったら、ミニトマトを並べたお皿をすっと出してきた結城。

悪魔は、笑顔だけは天使のように優しいなんて新発見。

『……トマト食べなくたって大人になれる』

結城「大人になるために必要な栄養です。

トマトにはリコピンという栄養素が含まれていましてですね、」

『それくらい知ってる。ケチャップ食べるからいいの』

結城「ケチャップは加工品ですよ？リコピンは生の方が…」

『ケチャップの方がリコピンの吸収率高いんです〜知らないの？』

結城「…………やっぱり、成長は寂しいものです」

『捻くれて成長しちゃってごめんなさいね〜』

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